自傷

誰も聴こうとしてくれない。

理解してもらえない。分かってもらえない。

辛いのに。どうすれば伝わるの？


虚ろな目でカミソリを眺める。


身体も壊れない。病気にならない。

それじゃあ証明しようがない。

“心の不調”なんて言い訳、通用しない。


腕をまくる。白い肌に透けて見える青い静脈。


私が拙い言葉でSOSを発したところで

「弱すぎ」

「わがまま」

「甘えてる」

そう言われるのは分かってる。

誰も受信してくれない。


私はもうとっくに限界なのに。これ以上耐えられないのに。


どうすれば伝わるの？

私がおかしいの？


もう自分で傷付けるしかない。

今どれだけ壊れかけてるか……


カミソリを手首にあてる。


訴えるのに

分かってもらうために

振り向いてもらうために


刻みつけて、視覚に訴えるしか

伝え方が分からないよ。


刃を手首に押し付ける。

強く手首に押し付ける。

でも肌の弾力に押し返される。


それだけで切れてしまえば楽なのに。横に引く勇気が出ない。

結局私はそんなに傷付いていないのか。

甘えてるだけなのか。

情けなくて涙が溢れる。


流れてほしい血は出ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録（無料）

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る