第三章8  『とある絵描きの心象風景』

あるまちに まずしいえかきがいました


えかきはきれいなけしきや ひとの 


うつくしい こころをえがいていました



そんな えかきに こいする 


うつくしい しょうじょが いました 


えかきと しょうじょは しぜんに 


ひかれあい ともに せいかつ 


するように なりました



まずしくも あたたかいひびが 


つづきました そんなあるひ 


えかきに こどもができました


つまによくにた うつくしい


おんなのこ でした



えかきは このうつくしい 


じょうけいを えいえんに 


とどめたいと ねがいました



あるひ えかきのつまは 


おもいびょうきを わずらいました 


えかきのつまは ひにひに 


やせおとろえて いきました



まずしい えかきは 


つまにくすりを かうことも 


できませんでした



うつくしかった きんいろの


かみは ぬけおち


はだからは きいろい 


ちとうみ が でてきました


はだは ねずみのようないろに 


なっていました



えかきは かなしくて かなしくて 


みずたまりが できるくらい 


なみだを ながしました



かみさま つまをたすけてくださいと 


まいにちねがいました 


ですが かみさまは 


ねがいをかなえて くれません



つまは わたしをころしてと 


なんども おねがいしました


ですが えかきは たったひとつの 


ねがいすら かなえてあげませんでした



えかきのつまは ひにひに 


こわれて いきました


そして えかきのつまは 


さいごに えかきにいいました



あなたは たったひとつの 


わたしの ねがいすら


かなえて くれなかったのね



そのことばを さいごに 


つまはうごかなく なりました



えかきは まいあさ まいよ 


こうかいの なみだをながしました


えかきは うつくしさをりかいしない


かみさまからの ばつだとおもいました



えかきは うつくしかったころの 


つまのすがたと その うつくしさが 


そこなわれるもの であるという 


しんりを りかいしました 



おとこは うつくしい けしきが 


そこなわれていく そのすがたを 


まいにち えがきました 


かれゆく きぎや ちりゆく はな 



うつくしいものは ことごとく 


すべて そこなわれるものだ 


とそのしんりを えかきは 


えがきました



すると どうでしょう



いままで うれなかった 


えかきのえは とたんに 


うれるように なりました



えかきの えがく そこなわれゆく 


うつくしさを おおくのひとが 


ほめたたえ えかきは まちの 


ゆうめいじんに なりました



おかねは つかえきれないくらい 


あります もし そのおかねが 


あれば つまをすくえたと 


かなしくて えかきは なきました



えかきのえを おおくのひとが 


かい もとめました


おおくのひとが ほめました 


だけど えかきの 


こころは みたされません



えかきは つまによくにた うつくしい 


むすめを たいせつに そだてました


この うつくしさだけは そこなわせない


そう えかきはつよく おもいました



えかきは ひとびとに うつくしさ


とはなにか うつくしい は 


そこなわれる という 


その しんりを つたえること


そのかつどうに しょうがいをつかおう 


そう けついしました



さくしゃ:ふめい

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