誰だ

星浦 翼

第1話 

 目覚めると、隣で見知らぬ女が寝ていた。


 俺はそれを見て軽いパニックに陥った。ぎょっとして周りを見渡すが、室内は暗く様子を伺うことはできない。俺が知ることができたのは、俺と女はダブルベッドに寝ていて、共に全裸で、俺の腕には女の頭が乗っている――俗に言う腕枕の姿勢を取っている、ということだけだ。


 俺は昨日の記憶を思い出そうと必死になったが、焦る頭から答えを導き出すことはできなかった。そもそも、今日が何日の何曜日なのかもピンとこない。


 女は心地良さそうに吐息を漏らしており、起きる様子はない。


 俺は女の顔をまじまじと見つめた。


 女の容姿は65点ぐらいで、可もなく不可もない相手だと思った。女はだらしなく涎を垂らしている。俺はこの女と関係を持ってしまったのだろうか?


 俺は慎重に女の頭を腕から下ろすと、そそくさとベッドを抜け出した。


 目が闇に慣れ、先ほどよりも室内の様子が掴めてくる。


 ここはホテルの1室だ。ダブルベッドの前には大きな鏡が張られており、出入り口とシャワールームとトイレの扉が見える。ベッドの端には照明のスイッチがあったが、女が目覚めるのを恐れて手は伸ばせなかった。


 ベッドの周りに脱ぎ捨てられた衣服を引っかき集める。


 服を着ている途中にベルトの金具が擦れ、静かな室内に耳障りな音が響いた。俺は慌てて女に目をやったが、女はすやすやと寝たままだった。


 この女は何者で、どうして俺と関係をもったのだろう。


 俺は逃げるように部屋を出た。

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