12.居場所

「あそこまで行こう」とあなたは言うけれど 私にはあなたの言うその場所が見えない

そのことを言えずにいると あなたは「連れて行ってあげる」と言って 私の手を引いた


あなたは嘘を言う人ではなかったから きっと 夢でも幻でもないのだろうと思う

でも・・・ねぇ、待って。 あなたが行こうとしているそこは――


少しでも躊躇いを見せるべきではなかったのかもしれない

私の手を引いていたあなたは 私の心を見透かしたかのように立ち止まった


振り向いたあなたの顔には表情なんかなく 私を見ているようにも見えなかった

それでも確かに 振り向いたあなたの目から 涙が零れたのはわかった


ここがどこでも あなたが連れて行ってくれようとしているそこがどこでも

私の居るべき場所は いつでもあなたの傍でしかない だから私も・・・


躊躇いを捨てて 今はあなただけを見る

「あそこまで行くんでしょ?」そう言って私は あなたの手を引いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る