77. Deus Ex Machina Ⅱ
「……はっ!」
理里は気が付くと、四車線車道のど真ん中に立っていた。
ぱ、と信号が赤から青に変わる。銀歯の光る初老のドライバーが、ぱぱー、とクラクションを鳴らして、彼に怒鳴りつけて走り去って行った。
「バッキャロー、あぶねえだろうが!」
そう言って、先ほどまで手塩と麗華が泣き崩れていた場所を、真っ赤な軽自動車が通り過ぎていく。
空はあいかわらず曇天。しかし、先刻までのような豪雪は降っていない。当然だ、四月終わりに雪など北海道でも降らない。
ばさばさ、と音を鳴らして、道路沿いの電線からスズメの群れが飛び立った。うち一匹がフンを落とし、犬の散歩をしていたご婦人のくるくるパーマにびちゃっと直撃。女性は悲鳴をあげ、その周りでマルチーズがわんわんと吠えていた。
「これ……は……?」
その後も何台もの車が、理里にクラクションを鳴らして去っていく。しかし彼もひどく疲れており、一歩も動けず、その場に倒れてしまった。
彼が最後に見た西のほうでは、赤い夕焼けが雲のカーテンを照らしていた。
《第1章 第4節「天馬騎士と氷の獅子」 完》
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