クマといえば蜂蜜
うちのクマが大事な装備を破壊してしまってごめんなさい。申し訳なさ過ぎるので、速攻で暴露する。
「ごめん、あれ、私が居た世界の奴みたいなの。怪我してない? あのクマは殺傷性がまるで無いから怪我してないと思うんだけど。装備を壊してくるだけなの。ごめんね、二人とも服とか装備壊しちゃって」
しかも大たわわと中たわわまで出させちゃって。
大たわわの美人さんが首を振る。
「別にクルミさんが悪い訳じゃありませんから。それに私は服だけですし」
「私は胸当てと服かな。でもやっぱり怪我は無いね。正直、死んだと思ったけどね」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいなの」
「わふぅん」
空気を読んでココとシロもなんだか申し訳なさそうにしている。
「もう、いいんですよ。でも着替えは持ってきてないんですよね」
「私も。タオルくらいならあるけど。一応タオルで隠しておこうかな」
「ちゃんと弁償するから!」
「いいですよ」「いらないよ」
「ダメダメ! 私が気になって二人と遊べなくなるから、絶対ダメ!
とりあえず、これでも着ていて」
クマの着ぐるみを出しかけてしまったけど、よく考えたら衣装をインベントリに入れてた。余りとか街で着る用の普通の服とかならあげても大丈夫。たぶん。
変な機能ついてたらどうしよう。でも誰かにうちの可愛い娘達のおっぱいを見られるのは許せないので仕方ない。
セリスには普通の白シャツ、シャーリーにはピンクのワンピースを渡した。ズボン単体ってあんまり持ってないんだ。 それに上下のセットアップだと変な装備効果付いたら困る。
ゲーム的にサイズ設定はなかったから、たぶん勝手に二人に合わせて大きさも変わるだろう。
「あっ、ありがとう。これ良い生地だね。手触りがとっても良いよ」
「私はワンピースですか? 可愛いですね。ちょっと着替えますね」
わあっ! ぼよーんって効果音の幻聴が聞こえるほど、豪快にたわわが現れた。やっぱりブラしてないよこの人。イタリアとかギリシャとか行くと普通にノーブラで歩いてる人いっぱいいるから、文化の違いかなぁ。
自動撮影はどうやら意識してたら止められるみたい。残念、じゃなかった、良かった。
「二人とも木陰とかで着替えないの?」
「いえ、魔物?、クマも出ましたし、離れたり見通しの悪いところにわざわざ行くのは危険です。着替え中は無防備ですしね」
「なるほどー」
確かに木陰で着替えてたら危ないね。トイレはどうするのかな。見えるとこでするの恥ずかしいんだけど。
「トイレはどうするの?」
「トイレも基本的には皆から見えるところでしますね。見ませんけど。
特に無防備になるので、他の人が少し離れたところで警戒して、地面に穴を掘ったところに用を足します。トイレポンチョというのがあって、それを着用してお尻や用を足しているところが見えないようにします。顔だけ出たテントみたいになるんです。
音や臭いもポンチョの中に籠もるので、そこまで気になりませんよ。
男女混合パーティーだと着替えもポンチョの中でしたりしますね」
ああ、それは良いね。でも聖女様が勇者の前でトイレとかしちゃうのかぁ。大変だなぁ。私も一応そのポンチョ買っておこう。あと洗浄トイレも。
工事現場とかにあるボックストイレみたいなの作っても良いけど、結局見張りがいないと見えない分危ないし、ポンチョみたいにすぐ逃げたりできない。
ポンチョかぁ、嫌だなぁ。女子だけならまだしも、男の人とか居たら嫌すぎなんですけど。
やっぱり私には冒険は向いてないね。
二人とも着替え終わったけど、それ私の服よね? そんなに胸が強調されてた憶えないんですけど。
着痩せしてた胸が、タイト目の白シャツによって強調されてスタイルの良さが際立っている。白シャツの胸って男子大好きよね。
元々タイトじゃなかったとは思うけど、まあこれは良い。
シャーリーが着てるのって、シルエットが出にくいワンピースだったはずなのに、なにその胸の下のリボン。そんなのなかったよね? いや、あったのかな? でもそんな胸を強調するための物じゃなかったよね? 胸の下ってストンとなってたはずで、そんな絞ってなかったよね? そんなにデコルテ開いてなかったよね? はちきれそうですけど?
ノーブラだし、レッドカーペットで見るハリウッドスターみたいですけど?
もしや『装備効果:色気』とかじゃないだろうね? アイテム説明をチェックしてみたけど、何の装備効果もなかった。下せぬ。
「二人とも胸がはちきれそうでムカつきます」
「ええっ、そんなこと言われても、クルミの服だし。ちょっと小さいのは仕方ないんじゃないかなぁ」
「そうですよ、お子様用の服が着れただけでも奇跡的です」
「いや、それサイズ自動調整されてるはず。私が着てもそんなにエロい服じゃないもん」
「確かにお子様用にしてはセクシーかもしれませんね」
何度もお子様用言うなし!
「もう、それあげる。何か私が着たら負けた気になると思うから」
「えっ、良いの!? 凄く高そうだけど」
「ちゃんと洗ってお返ししますよ?」
「うるさいうるさい! 私の胸はまだ成長期段階なの! まだまだ変身を残してるの!
おっぱい姉さん達は、それ着てモテたら良いんだ!」
何だかよく分からないことを言ってしまった。何か悔しいので、私も着替える!
「セットアップ!」
しゃらーん! くまぐるみー!
さっき手に入れた可愛いくまさん着ぐるみに着替えました。着替えたと言うより、変身みたい。顔出てないし。
「わああっ、さっきのクマ!? あれ? もっと可愛いね?」
「くまぐるみのくまぐるみ・クルミです」
くまぐるみ・クルミ
LV:5
スキル:料理、手芸、農業
魔法:火魔法
装備効果:装備破壊、魔法無効、物理耐性、剛力、蜂蜜ハンター
しまった。変なこと言ったら名前が変わってしまった。それにしても簡単に変わるのね。
まあいいや、どうせすぐ戻るだろうし。装備効果がとても戦闘向き。これも封印かな。でも最後の蜂蜜ハンターは気になる。
とてもスレスレな気がして恐ろしい能力だ。クマと蜂蜜は割とメジャーな組合せだから、良いことにする。その組み合わせが黄色いクマによる洗脳かもしれなくても。実際に蜂蜜も食べるらしいしね。ハチノコ目当てらしいけど。
「クルミ、変身できたの? 変わった魔法だね」
「着替えただけだよ。お着替え魔法みたいなもの。良いからもう行くよ! 私はもう拗ねました! もう帰って美味しいものを食べて、遊んで、皆でお風呂に入ります!
今日は帰しません!」
「ああんっ、可愛いー! 持って帰りたいですー!」
シャーリーお姉様、あんなに勇ましかったのに… この人もメルヘンにやられてしまったのか。くまぐるみ・クルミに抱き付いてスリスリしていますよ。
くまぐるみパワーでシャーリーさんをお姫様抱っこしてみた。剛力が付いてるので軽い。
「きゃあっ! 何だか嬉し恥ずかしいです!」
これ女の子を攫うクマの図よね。ハンターに襲われそう。早く帰ろう。蜂蜜はまた今度。
「あははっ、私も私もー!」
早く帰りたいけど、可愛い子の頼みは断らない主義なの。替わる替わる抱っこして、クルクル回ったりして、プチクマ祭りを催してみた。本当は皆くまぐるみで踊るんだけどね。
「クマクマ、くっまー、くまーくまー♪」
意味のない歌を歌いながら帰っていると、蜂の巣を見つけた。でも蜂蜜ハンターの感覚が蜜蜂の巣ではないと告げているのでスルー。
「あっ、蜂の巣だ。ハチノコって食べられるんだよ。採る?」
「蜂恐いの」
ココがちょっと震えている。
「いいよ、もっと美味しいもの用意してるから」
その間もセリスとシャーリーさんは私と手を繋いでいる。二人ともくまぐるみが気に入ったようで、両方の手をとられて歩きにくい。
「そう言えばお家はどの辺りなんですか? あまり奥に行くと妖精に道を迷わされてしまいますよ」
「そうなの? ここからそんなに遠くないよ?」
「私もこの辺りまでしか来たこと無いなぁ。ギルドでも奥まで入らないように言われてるから」
「ふうん、じゃあ知らない人が来なくて安心だね」
「ふふふっ、前向きですね」
「あんまり奥だと気軽に遊びに来れないよ」
「別に気軽に来てくれても大丈夫だと思うけど。一応ココも妖精だし、迷わされないんじゃない?」
「二人は大丈夫なの」
「ほら、こう言ってるし」
二人とも奥に行くのは躊躇いがちだったけど、ココがいるからかちゃんとついてきてくれた。
もうすぐホームというところで、もう一つ蜂の巣を見つけた。今度は蜂蜜ハンターの嗅覚も納得のご様子。
巣の中からミツバチが飛んできた。偵察なのかな。
「はわわ、蜂恐いの!」
ココはシロの後ろに隠れてしまった。ココの大きさからすると、蜂って十分大きくて恐いよね。
「ミツバチさん、こんにちは」
こんにちはー
あっ、これ、分かっちゃった。あれだ、リンゴの木の妖精さんと同じ感覚。もしかしてうちのホームフィールドがここまで広がってるのかな?
「ミツバチさん、ミツバチさん。美味しそうな蜂蜜の香りがしますね。良かったら私に少し分けてくださいな。代わりにここに花の種を蒔きましょう」
いいよー こっちきてー
ミツバチさんは、そう答えるとクルクルと踊るように飛んでいきます。
「まあ、可愛いー! ミツバチさん、ですって! 話しかけちゃって! もうたまりません! 今日は帰りませんよ!」
悶えるシャーリーさんは無視して、二人の手を放してもらうと巣の下へとやってきました。
て、だしてー
クマさんが手を差し出すと、そこにポトリと小さな蜂蜜のツボが落ちてきました。
「「えっ」」
「ありがとう、ミツバチさん。じゃあ、私は可愛いお花を咲かせますね」
クマさんはどこからかスコップを取り出して地面に突き刺します。するとたちまち周りの土がフカフカになりました。
クマさんは満足そうに頷くと、またどこからか花の種を取り出して辺りに蒔き始めました。
蜂の巣がある木の周りに種を蒔き終えると、地面をポンと叩きました。
すると、地面から若葉がポンと顔を出しました。
「「えっ」」
クマさんは、もう一つポンと叩きます。すると、若葉は成長して蕾をつけました。
さらにポンと叩くと蕾が花開き、辺り一面が色とりどりのお花畑になりました。フワッと優しい花の香りが広がります。
クマさんは満足気に頷き、ミツバチ達は喜びのダンスを踊りました。
「「ええええっ!!? メ、メルヘン!」」
はっ、しまった。二人にメルヘンモードを見られてしまっためるへん! 恥ずかしいめるへん!
驚いている二人を尻目に、気を取り直して、秘技『えっ、こんなの普通ですけど、何か?』作戦で行くよ!
「蜂蜜ありがとう、ミツバチさん。この花で、また美味しい蜂蜜作ってね」
つくるー またきてー
見送ってくれるミツバチ達に手を振って、二人の元へと戻った。
「いやー、ラッキーだったね。蜂蜜もらえて良かったよ」
さっきもらった妖精印であろう、ハニーポットを見せてあげる。
「えっ、何それ?」
「蜂蜜を貰ったって言うより、ハニーポットを貰いましたよね?」
「ん? 美味しそうだよね」
この森ではこれが普通なの。慣れるのよ、二人とも。
「どうして壺に入って出てきたの? というか、巣を潰さないで蜂蜜が採れるのもおかしいよね?」
「お花が咲くのもおかしいと思います」
二人とも、考えちゃダメ。感じるの。トイレで死んじゃったジークンドーの人も言ってたでしょ。
「チッチッチ、二人ともここを何処だと思ってるの? ブルーベルの森だよ? つまり妖精の森だよ? メルヘンなんて当たり前めるへん」
ブルーベルの森だからというか、その中の『ブルーベル・フォレスト』に浸食されたエリアだからだと思うけど。
「「当たり前めるへん?」」
「そこは気にしなくていいの!」
くまぐるみで見えないけど、顔が真っ赤になってしまっためるへん。
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