第4話決意

 12月の初め、女の子はある決意をした。今まで諦めてきたことに、挑戦する決意を。「-、私ね」

 にゃー?(なあに?)

「今からお金を貯めて、クリスマスケーキを買おうと思うんだ」

 ピクン(ケーキ?)

「クリスマスはね、家族と楽しく過ごす日なの。大切な人に、贈り物をする日なんだよ。」

猫は黙って話を聞いている。

「暖かい食事を囲んで、クリスマスカードを贈って、クリスマスをお祝いしあう。そして、当日には大切な人へ贈り物をする。それが本当のクリスマスなんだって。」

「だからね、クリスマス、お父さんと楽しく過ごしたいの、どうかな?」

 ニャー(…いいと思う)

「賛成してくれてるのかな?頑張る。お父さんと、仲良くなりたい、普通の家族みたいに…なりたい。優しくしたいの。あなたと会ってからね…そう思うようになったんだ。」



その日の昼下がり

ぴくっ。猫は縁側で昼寝をしていて、かさかさっという音を聞いた。ゴキブリだった。それを見たとき、女の子はいつも泣きそうな顔で必死に追いかけ回す。それを見て猫はいつも捕まえるようになった。でも、それを持っていくと女の子は本当に泣いてしまったので、こっそり捕まえてこっそり捨てることにしている。縁側から中に入れてはいけない、いきなり飛びかかっていって、逃がしてもいけない。まずはそばに2回ジャンプし、外側に逃げるように追い立てる。隙間に入るまでに思い切り飛びかかった。左側に逃げることを予想して左の前足でガッと捕まえる…ことはできなかった。そのまま前足をすり抜けていく。が、すぐさま右の前足で叩き、全身で捕まえ逃がさないようにする。

…猫は、自分の体の変化に気づき始めていた。それは、人間より猫が敏感に感じ、そして人間よりシンプルに受け入れているものだった。

『クリスマス、お父さんと楽しく過ごしたいな、』女の子の言葉を思い出す。くりすます、とやらで、女の子がひとりぼっちでなくなるといいと、猫は思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る