23ページ目 12月10日

 本は世界を繋ぐ扉だ。

 

 異界の伝説について紡がれた一連の物語と、そこから派生した、或はその物語の元となった様々な研究資料を読み耽っているうちに、数日が経過したらしい。

 どれ程の時間が経ったかは分からないので、いつかと同じく、日付は適当に検討を付けたものを書いている。


 まるで私自身が、異界の旅から戻ってきたような気分だ。


 最後の一冊を読み終えてふと我に返ってきた時、私の世界を取り囲む、あの砂の本すら隠せそうな本棚の森と、地下から確かに響くモーター音が私を出迎えてくれた。


 これ程幸せな帰るべき家が、果たして他にあるだろうか。


 今夜は久しぶりに、あの扉の前で眠りにつこう。

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