少女たちの笑顔と最悪の邂逅

 宇宙はいつでも宇宙だった。

惑星ディモから三日。相変わらずマリガンはダンマリ落ち込んでい

たし、逆にルーチェは落ち着きが無かった。母親に早く会いたくて

しょうがないのだから当然のことである。

「まだ着かないかなぁ」

 相変わらずスリーの部屋に入り浸っていた。

「それ一日に何遍言うんだよ」

「母さんにあうまで!」

 勘弁してくれとスリーは思った。

「……母親にあったらどうするんだ?」

「え?」

「いや久しぶりに会うんだろ?何か言いたい事とかやりたい事とか、

あるだろ?」

「……うーんお話したいなぁ。今まで何してたのーとか。」

「そうか。良いことだな」

「そういえばスリーのお父さんやお母さんはどんな人なの?」

「俺?俺はどっちも会った事ねぇよ」

「……ごめん」

「別に大したことじゃないさ。このご時世珍しい事じゃ無いしな」

「…………」

 気まずい雰囲気になってしまった。スリーは溜息を一つつくと、

にゃんキューブの飾った棚の前に立ち、一つを掴んでルーチェに差

し出した。

「え?」

「やるよ」

「けどこれアトムスフィアの限定品じゃ……」

「いいからやるよ。大事にしろよ」

「……ありがとうスリー」

「いい人だといいな、お母さんさ」

「……うん!」

 すっかり機嫌がよくなったらしい。二人は時間を忘れて話続けた。


 キジヌは自室にいた。座席に深く座りリラックスしていた。部屋

の中にはクラシック音楽が鳴っていた。キジヌの魂は今深緑の中に

あった。羽ばたく鳥。そよぐ風。舞う蝶。這いずる芋虫。彼の魂は

肉体を離れて羽ばたいていた。彼を縛るものは何も無い。自由だ。

キジヌは立ち上がりデスクの上に上がった。片足を上げて両の腕を

伸ばした。自由だ。今彼は自由そのものだった。

「……あのーそろそろいいデスカ」

 キジヌはすぐさま椅子に座りなおした。アビゲイルが扉の前に浮

いていた

「ノックは」

「何度もしましたよ」

「そうかそれで何か用かね?」

「はい言われた通りに調べてみました。『黒』デシタ。」

「……そうか残念だ。彼女は今なにをしている?」

「変わらずデスネ――」

 アビゲイルの言葉を遮るように警報が鳴り始めた。

「敵襲か!」

「らしいデスネ」

 二人はブリッジへと駆けて行った。



 ブリッジには全員が揃っていた。キジヌは声を上げた。

「敵は何機だ?」

「一隻デスネ。どこの艦かは分かりませんが戦艦級デス」

「どうするボス?砲撃戦じゃ勝ち目無いぜ。」

「……『バレル』を使おう。」

「了解。準備が出来たら言ってくれ。」

「あの……『バレル』とは……?」

「見てからのお楽しみってね!」

『こちらの準備は整った。いつでも撃ってくれ』

 『バレル』とは要は『人間大砲』である。グレートジェントルマ

ン号の正面砲にキジヌの入った砲弾を装填し打ち出す兵器である。

星越者であるキジヌを敵艦に直接叩きこむことにより敵艦内部から

攻撃、制圧する為のものである。

「『バレル』ファイア!」

 スリーの号令で『キジヌ砲弾』は発射された。放たれた砲弾は見

事敵艦の左舷部に突き刺さった。砲弾から飛び出したキジヌは艦内

を風よりも早く駆けた。だが何かがおかしい。艦内に人ひとり居な

いのだ。グレートジェントルマン号は内部機能のすべてをアビゲイ

ルが統括し運用している為、四人でも十分運用出来ている訳であっ

たが、この艦にはそれすらも感じられなかった。 

ブリッジにたどり着いた。そこには漸く一人の男と出会うことが出

来た。三メートルを超える筋骨隆々の巨躯。純白の肌に身の丈程の

長さの八角棒。キジヌはそれが誰だか一瞬で分かった。瞬時に体内

通信機でスリーに叫んだ

「トウゴだ!早く逃げろ!」

 眼前に居たのは、宇宙最強の賞金稼ぎだった。

  

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