第6話  帰路



「ちょっとーどうしたの!」

店長がのそりと近づいていた。先ほど自転車を止める時はあまり気にしなかったが

この店長・・デカイ!!


小学生の自分からしたら、大人が大きいのが当たり前だ、しかし近づいて見上げると

その身長は180センチを超えてそうだ。だが体格がいいワケでも横幅も無く背が高いだけである。だが近づいて見下ろされるとどうしても人間はその圧力を感じる。

口をひらく店長。

「ダメじゃない~喧嘩しちゃ~」

店長の目線を追い振りかえると、ケンカの当事者二人が立っている。

ヤンキーは真っ直ぐ店長を睨み、ヒョロメガネは半べそかいていた。こうして

みるとヒョロメガネはまだ小学生5~6年くらいだろうか、目から涙を流し赤く染まったほっぺはあどけなさを感じた。その表情には安堵や抗議の気持ちが渦巻いているようだった。


涙と怒りと恐怖に嗚咽しながら訴えるヒョロメガネ「ぼ・ぼくが・ずっと待ってる・あっ・え・代わって」

なんとなく事を察した店長

「ん~~ 順番に代わってあげてね~君~」

臆面もなく、大人にすがるヒョロメガネを睨むヤンキーだったが、店長から注意をうけると真っ直ぐに店長に対し。

「はあ!?うっせーし!」

その態度に怒るでも、怯むでもなくただ半歩前にでる店長。

ヤンキーに近づき真上から顔を覗くと、ヤンキーは目を逸らす。

「俺だけじゃねーし、順番まもらねーの」


事を見守ってたヤンキーが

「はあ?なに修二こっちに擦り付けてるんだよ!もういいから出ようぜ」

ゲームをしていたヤンキー仲間も。

丁度ソドムにコーディーがやられた所だった。

「あーもう、またやられたぁ・・ あ!シュウ先に出ってるわ」


店を出て行く二人、なんともいえない表情で佇むヤンキーの修二くん。


店長はなんの事もなさそうにそのやり取りを眺めている。


(どうやら収まりそうだな・・)


店長が口を開く、「待ってる人がいる時は、1回終ったら代わってね~」

 泣きやんだヒョロメガネを見て言葉を続ける店長。

「じゃあ次は君の順番だね~」

ヒョロメガネはコクリと頷く。

「それで次は君ね~」次の瞬間店長は、こちらを指さして微笑んでいた。

「え・・・いや・・?」

ヤバイ知らないうちにこの騒動の関係者に入れられた!!

「いや・・違うよおじさん」

ヤンキーとヒョロメガネあと多数のギャラリーの目がこちらに集中する。

(ヤバイ!!なんかめんど臭いし目立ってしまった)

「ち・違うよおじさん、並んでないからさぁ!!」

「え~でもずっとプレイするのう見てたよね~」

(なんで、粘るんだよ店長。)


「え・・イヤ・・ワイは・・そう横のコレ!

ファイナルファイトの横の台、USネイビーしようと見てだんだよ!!」


『U.S.NAVY』同時期のカプコンの横シューティングゲーム。

実在の戦闘機を操り戦うのが特徴だが少し前のカプコンの横シューティングゲーム

「エリア88」の焼き直しにしかみえないゲームだ。


素早く台に座り、ゲームを始める。


(ふう・・どうにか無関係ぽく終れそうだ)


周りの人や野次馬もいなくなるの気配が感じられた。

しかし横のファイナルファイトの台に座るのは当然、、ヒョロメガネである。


筐体にお金を入れゲームを始める。

「ドカドカ・・・バシバシ・・・ウォー」

(なんか気まずいなぁ・・。)

すると横のヒョロメガネがゲームをしながら一言つぶやく。

「 ありがとな・・・」


!?????????!

なにが一体「ありがとな・・」なのだ?。


もしかして「ドンマイ」のテレパシーが届いたのか!?


しかしこれ以上話したい気分ではないので、思わず。

「うん・・」

そう答えてしまった。


それからほどなくワイの操るF14は地面に激突しゲームオーバーとなった。


そそくさとその場を立ち去り、店を出る。


外に出ると明るい光と、街の濁った空気に安心感を感じた。

滝川君は先ほどの騒ぎに恐れをなしたのか、すでに自転車置き場にいた。

「かえろー」。そう短く言う滝川くん。ワイも素直に「かえろーか」と言った。

日はまだ高くその暖かさに背中を押されながら家路についた。

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