アダムとイヴ
新世紀十二年。
A.C.0012。
独自の改良が加えられ、戦闘型に改造されたオメガは、全ての戦闘型兵器及び武力組織との本格的な戦闘を始める。
味方は、生みの親であるヴィルヘルムのみ。
対して、敵はオメガを除く、全ての戦闘型のハイブリッド・ロボット。
圧倒的な不利にも関わらず、オメガは戦い続けた。
何度も傷付いた。
何度も膝をついた。
だが、それでも、オメガは戦い続けた。
ヴィルヘルムと共に、希望をもたらす為に。
新世紀十三年。
A.C.0013。
たった一年で、オメガの戦いは終わる。
ハイブリッド・ロボットを使役する全武力組織は壊滅し、オメガは勝利したかに思えた。
しかし、現実は違った。
戦争に使役されたハイブリッド・ロボットや、多くの武力組織は壊滅したものの、ハイブリッド・ロボットを開発し、それを利用するヒト…つまり、諸悪の根源は存在し続けた。
終わりのないゼロサムゲーム。
オメガの戦いは終わっても、戦争は終わっていなかった。
そして度重なる戦闘と、過度な改造と調整。
酷使されたオメガの体は、やがて耐えられなくなり、戦闘型兵器としても、ハイブリッド・ロボットとしても、役割を果たせなくなった。
全てを、オメガに背負わせてしまった。
本来ならば、このような事態を招いたヒトが背負うべきものを。
本来ならば、オメガではなく、私自身が背負うべきものを。
ヴィルヘルムは、ただ罪の意識を抱き続け、そして何よりも、無力な自分自身を呪った。
ただ、それでも、戦争は終わることを知らない。
自分が全ての元凶だ。
ハイブリッド・ロボットを生み出さなければ、こんなことにはならなかった。
挙げ句、エーテルという希望を生み出すエネルギーを、絶望を生み出すエネルギーとして使うことになってしまった。
このままでは、いずれロボットという存在が、ただ破壊を繰り返す殺戮兵器になってしまう。
その前に、止めなければならない。
オメガではなく、何より自分自身が。
ヴィルヘルムは、やがてハイブリッド・ロボットの発展機の創造を始める。
ハイブリッド・ロボットを、破壊の象徴となってしまった存在を止めるもの。
絶望ではなく、本当の意味での希望をもたらす存在。
彷徨える人々を導く存在。
遥か昔、人々が幻想の中に抱いた、ヒトの形をした、ヒトと変わらぬロボット。
それこそが、ヴィルヘルムの目指したものだった。
新世紀二十年。
A.C.0020。
全てのハイブリッド・ロボットの始祖たるアルファを雛型に、ヴィルヘルムはある存在を生み出す。
ハイブリッド・ロボットと同じく、ヒトの形をしているものの、その内部構造は遥かに違う存在。
ヒトと限りなく近く、ヒトとロボットを繋ぐ存在。
ヒトと変わらぬ、無限の可能性を秘めたる存在。
その存在の名は、アンドロイド。
かつて幻想の産物だった存在は、ヴィルヘルムの手によって造られた。
ハイブリッド・ロボットの始祖であるアルファとオメガ。
そして、その二体の流れを汲んだ、アンドロイドの始祖たる二体の「アダム」と「イヴ」。
この二体のアンドロイドの存在こそが、新たなる物語の始まりだった。
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