STAR GAZER

@goldman

プロローグ

始まりの日

今では、旧世紀と呼ばれる時代。


その時代に、かつて世界は衰退の一途を辿っていた。


化石燃料は枯渇し、そして人々は貧困に喘ぐ時代。


世界そのものを包み込む混沌に、世界はいつしか、希望という言葉を忘れていた。



旧世紀二千四百九十五年。

L.C.2495。


そんな時代に、ある一人の男が、希望の光を見つけ出した。


化石燃料の枯渇により、深刻なエネルギー不足に陥った世界にもたらした希望。


それは皮肉にも、とある化石燃料の資源発掘所の地中に埋まっており、化石燃料よりも数倍のエネルギーを生み出す物質だった。


枯渇した化石燃料に代わる、万能物質の源。


それは、超常的なエネルギーを発し続ける異端の存在であり、惑星の心臓とも呼べるものでもあった。


その物質はたった一基しか存在しないにもかかわらず、惑星を潤す謂わば血液ともいえる程の膨大なエネルギーを放ち、また様々な物質に転用できる柔軟性を持つなど、今まで発見したものからはあり得ない能力を秘めていた。


まさに世紀の発見とも呼べる出来事に、人々は歓喜し、そしてその物質は希望の象徴となった。


やがて、時代が欲していた希望に満ち溢れた世界を手に入れる為、人々は万能物質と共に動き始めた。



時に、旧世紀二千五百三十七年。


L.C.2537。


約五十年近くの歳月を経て、万能物質は本格的に採用されることになる。


それによって、深刻なエネルギー問題は解決し、衰退の一途を辿っていた世界も、繁栄の兆しを見せる。


また、万能物質を解析していく過程で、それは科学や工学の分野に絶大な影響を与えた。


深刻なエネルギー問題の解決と、衰退していた世界の復興。


世界がさらなる繁栄を遂げるのは、時間の問題だった。


同時に、その万能物質を「アクダス」と呼称するようになった。



旧世紀二千五百五十三年。


L.C.2553。


世界が繁栄していく中、万能物質を発見した男は、悔やまれながらも、その生涯に幕を閉じる。


齢七十一歳。


五十六歳にして、世界を救うエネルギーを発見した男。


彼の名は、エーテル・フェルディナンド。


万能こそ、万人の為に在れ。


その願いを乗せて、また世界を救った救世主の賜物として、アクダスから生み出されるエネルギーはエーテルと名付けられた。



それから、二十五年後。


エーテルを供給する施設第一号機が、科学者エーテルの故郷であるフェブロニアに建設されると同時に、アクダスもフェブロニアに保管される。


その施設の建設と共に、フェブロニアは未だかつてない発展を示した。


そして、フェブロニアに続き、世界各地で次々とエーテル供給施設の建設が計画される。


とはいえ、エーテルを生み出すアクダスは一基しか存在せず、同様或いは類似の存在を捜索するも、発見には至らなかった。


そこで人々は、アクダスの模倣を計画する。


厳密には模倣することすらままならないのだが、アクダスが放つ無駄といえる程の超常的なエネルギーを凝縮、転用させる補基を開発。


これらは、エネルギーを自ら生み出し発信する自律性を持つアクダスから、そのエネルギーを受信、そして凝縮及び変換と転用という形にすることで、擬似的にアクダスを模倣する。


擬似アクダスとも呼ばれるこの補基は複数製造され、そしてこれらは「サーヒブ」と呼称されるようになる。


アクダスとエーテル、さらにはサーヒブが、世界を変えようとしていた。

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