第三章:正義の味方は悪魔と相乗りはしない
第十四話
ジャックが軍人を辞めてから二週間後。未だに病院から退院が認められていなかった。
「どう? 腕と肺の調子は?」
「肺は問題ねぇよ。けど、腕はやっぱり違和感あんな。なんかバランスが悪い。なんとかしてくれよ、ニナちゃん」
ジャックは病院のベッドの上で文句を言う。ニナはジャックの言葉に苦笑いを浮かべた。
「無理言わないでよ、ジャック。只でさえ仕込みなんだから、それでも軽くした方よ?」
「それもそうか。仕込みじゃ無きゃ同じバランスに出来るのか?」
「まぁ、金属だから多少の誤差は出てくるけど、一応は可能よ。それで、これからどうするのよ? 軍人辞めちゃったんでしょ?」
ニナは義肢調整用の工具を仕舞いながらジャックに問う。
「う~ん...そこなんだよ。当面は色んな所を旅しながら傭兵やって金稼ぎしようかなって」
「銃が怖くなって軍人辞めた人の言葉とは思えないわね、ジャック」
その時、病室にレティシアが入ってくる。恐らくは検診の為だろう。
「別に傭兵として稼ぐ事位は出来るさ、多分。それに言ったろ? 旅しながらだから日銭稼ぎみたいなもんさ」
「......ジャック」
レティシアはどこか悲しそうな顔をする。ジャックはレティシアの頭を撫でて笑った。
「わーってるよ。安心しろって」
「なら良いんだけど。けど、無茶だけはしないでよね」
「余計なお世話だ。俺は俺なりにやる」
「そう、なら心配無さそうね」
ジャックの言葉にレティシアは不安を残した様な顔をしたが、そのまま退室していった。
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一ヶ月後。ジャックは病院を退院する事になった。
「さて、世話んなったな」
「本当ならまだ寝かせたいんだけどね」
「それなら、ベッドは俺よりも重患の患者に譲ってやりな」
病院のロビーでジャックとレティシアは話していた。レティシアはジャックに少し呆れている。
「ジャックよりも重患の患者なんて滅多に運ばれて来ませんよ~だ!」
「ハッ...ガキかよ。もう良い歳なんだからよ」
膨れっ面をするレティシアにジャックは笑ってそう言った。
「ねぇ、また会えるかな? また会って「ただいま」「おかえり」って言えるのかな?」
「......」
レティシアの問いにジャックは答えず、自動ドアの出入り口へと荷物の入ったトランクを担いで歩き出した。
「...答えてくれる訳無いよね...」
「言えるさ。俺が死なねぇ限りは...な。いってくるぜ、レティシア。元気でやれよ」
ジャックはそう言って手をヒラヒラと振って出ていった。
あの日、軍人となるべく家を出た日とは違う。二人の間には溝は無く、二人とも笑っていた。
「さて、俺も正義の味方になるために頑張りますかね」
ジャックは今は亡き親友の遺言を果たす為、バイクのスロットルを回した。
その時のジャックの目は少しばかり、光を失った様に見えた。
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旅に出たジャックは様々な場所を見て回る旅に出ていた。
そしてジャックはパノプティコン程では無いにしろ、十分に発展した都市『シルバーギルト』へと訪れる。
「ここがパノプティコン以外の都市...初めて見た。にしても...治安悪そうだな...」
ジャックはバイクを停めてバイク用ゴーグルを外すと、バイクを降りる。
それと同時にジャックは街の至る所を見渡す。
「さて、取り敢えずはこの街の事を知らねぇとな」
ジャックは近場の酒場へと向かった。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
店に入ったジャックは驚き、目を丸くした。
今まで自分達が倒していたアンドロイド達が接客をしているからだ。
それも人間より遥かにスピーディーに。
「見ねぇ顔だな、兄ちゃん。旅行客かい?」
カウンターに座ったジャックに店主らしき人が声を掛けてくる。ジャックはそれに対して答えてから疑問を放った。
「まぁ、旅行客ってよりは旅人ってのが正しい。それよりも、この街はどうなってやがる。なんでアンドロイドが接客を? 人じゃねぇのか?」
「兄ちゃん、田舎出身か? もう人が接客する時代は終わってるんだよ」
店主の言葉にジャックは言葉を失った。
「それよりも、この街の事を聞きたい。なんでこんなに治安が悪い? 軍や警察はどうしてる」
「あんなん、役に立たねぇよ。軍はパノプティコンとのいざこざで壊滅。警察もいざこざに巻き込まれて録な
ジャックは店主の言葉に質問をする。
「なぁ、ダンナ。もしかしてアンドロイドが接客やる様になったのもそれが原因か?」
「ん? あぁ、間接的にはな。元々、人が接客してたが、治安が悪くなるにつれて店で殺しが起き始めたんだ。だからアンドロイドに接客をやらせる店が増えた。それに...」
「それに?」
店主はジャックの聞き返しに小声で答える。
「この街をシメてるギャング共に対する抑止力でもあるんだ。アンドロイドは命令次第で人も殺せるからな」
「軍用アンドロイドなら三原則無しに命令を下せる...でも軍用アンドロイドなんてそうそう出回らないだろ」
ジャックの疑問は尤もだった。けれど、店主は自慢げに話した。
「なんとだな? ここに行けば、理由次第で色んなもんが貰えるんだぜ。しかもタダでな」
「へぇ...ウェポンディーラーがやってる店か。珍しいな」
「兄ちゃん、見た感じなんの武器も持ってないだろ? それじゃあこの街じゃ生きて行けねぇ。この酒は俺の奢りだ。とっととそこ行きな」
ジャックは店主にそう言われ、店を出る。
「さて、武器の調達に行きますかね...」
ジャックは独り呟いて、目的地へと向かった。
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