第51話 ニューロン

去年の9月に大きな台風がきた時、私はそれでも前病院の治療を受けるため、通院した。

私と前主治医の精神科医は対話の中で、彼は私に、ニューロン仮説、と紙に書いて、それを前に私に話をした。ニューロンというのは脳の神経細胞で、それらが無数につながり活動することが、生きていることである。神経伝達物質仮説、はわかりやすく、うつ病のメカニズムを解説するためにあるが、それだけでは説明がつかない。なぜなら、治るひとと治らないひとがいるからだ。ずっと神経伝達物質が減少し、伝達不十分になるのは考えにくい。じゃあ、治らないひとはなぜ。


その答えがニューロン仮説と呼ばれ、今研究がなされているらしい。ニューロンの一部がのびていない、もしくは切れてしまっていて、他のニューロンと伝達できない状態。


このニューロンをのばすお薬、新薬は、おそらくは私たちが死ぬ頃に世にでて来る可能性があるという。研究段階なのだ。


28年、治らない私は、でも新薬は試すことなく亡くなるのだろう。


数値化できれば、検査でわかれば、こんなややこしい対話療法はいらないでしょう。でも、今はこれしかないから、していこうと思います、と言っていた。


私は台風がくるたび、この話にうちのめされるのだ。

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