第1話
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【HELP】
Hello!ようこそ新しいダンジョンマスター!
ここは剣と魔法と化け物の箱庭【アルカディア】!
ここは、第13型合同経営体制の箱庭世界であり、その特徴として様々な種類の物理的生物と霊的生物、概念生物が生活し、また共存しております!
そして、幸運にもあなたにはその類稀なる特性と幸運により、この世界の一員【ダンジョンマスター】として生きていくことが認められました!
しかし、あなたは困惑しているでしょう、あなたは素人だ。
いきなり【ダンジョンマスター】になれと言われてどうすればいいかわからない。
そのはずだ。
しかし心配ご無用!
これをきちんと読み切れば、あなたが【ダンジョンマスター】として、楽しく生き残のこれるでしょう。
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さて、突然転移やら召喚やらどちらかわからないが、連れてこられた【ダンジョンマスターの部屋】そこの目の前のパソコンの画面に書かれていた文字をそのまま信用するなら、自分はどうやら本当に異世界とやらに来てしまったようだ。
なんとなく現実感がわかず、ふわふわした気持ちのままそのパソコンのキーボードに触れ、自分の今率直に思っている疑問をぶつけることにした。
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【自分の種族を変えたいのですが】
→【ダンジョンマスター】は基本、転職不可能です。
しかし、一部のアーティファクトやスキルで代用することもできるでしょう。
また、どうしても根底から変更したい場合はすぐさま、運営にご報告ください。
【運営への報告の仕方】
→現在、アクセス障害につき運営と連絡が取れなくなっております。
お手数ですが、直接運営本部天界第36号室へとお越ししていただけると幸いです。
【天界への行き方】
→申し訳ありません。『ダンジョンマスター』はクラス制限につき、外部への直接的移動は制限されております。つきましては、お越しいただく際には報告という形でお願い合います。
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こうして、異世界に来て早々どうしようもない理不尽に直面し、すべてを放り投げて、この日はふて寝するのであった。
「寿司は寿司でもパック稲荷かよ。
しかも味噌汁と牛乳って、どういう食い合わせだ」
パソコンで購入した冷蔵庫の中に入っていた食べ合わせ最悪トリオをいただきつつそんなことを愚痴る。
こんなことなら初めの質問に好きな食べ物と飲み物を満漢全席と烏龍茶と答えておくべきだったかもしれない。
というか
かくして、盛大に口の中で喧嘩し合っている味噌と酢飯と牛乳のハーモニーを無視しつつ、自分の置かれている状況について改めてパソコンに書かかれているHELPを見ながら整理した。
まず1つ目、ここは異世界的なサムシングである。これは確実。
次に2つ目、自分は種族【サキュバス】の【ダンジョンマスター】である。これもよろしくないがいい。
で、3つ目、残念ながら【ダンジョンマスター】は基本的に【ダンジョン】から出ることができず、これ位から一生ここで過ごさなければならない。以上である。
「うん、これ訴えたら許されるよな?そうだよな?」
残念ながら、訴えようにもそのための裁判所も警察にすら駆け込むことができないのだが。
そもそもこの異世界に警察署はあるのか?地味に興味が尽きない。
「でもまぁ、せめてもこれができるのが救いだなぁ」
そんなことを愚痴りつつ、パソコンの画面を新ためて操作して、それを確認する。
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【購入画面】
・家具雑貨
・ダンジョン拡張
・モンスター
・強化
・??
・??
残りDポイント 20P
▼購入履歴
【初級ダンジョンマスターセット】 40P
【安物一人暮らしセット】 40P
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「こういうのってめんどくさくて思わずセット販売のを買っちゃうよね」
そんな独り言をつぶやきつつ、モンスターの項目をクリックしてウィンドウショッピングを開始する。
映し出されるは、自分の見たことがない化け物や動物、およびそれに対する説明。
それらは見るだけでこちらの知的好奇心をむんむんと刺激し、TSしてなかったりボッチ状態でなければきっと素直に楽しめていたであろうことは間違いなしだ。
なお、ここで売られているのは【家具雑貨】は文字通り、食べ物や家具だが先に自分が買ったセットに入っていた、一日1回限定で対価無しで勝手にいなりずしと牛乳を生成するなぞボックスが含まれていたり、【ダンジョン拡張】は文字通りダンジョンを大きくしたり、罠を設置。【モンスター】はもちろん化け物の購入ができ、【強化】は文字通り【スキル】で自分やモンスターを強化する、そんな素敵な仕組みなようだ。
我こういうの好き!でも自分がサキュバスなせいで、強化の項目に【上目遣い】やら【手淫】のようなひどいスキルしか書いてなかった、我こういうの嫌い。
でも、おかげで解ったことは【ダンジョンマスター】とは、こういうのから魔物を買ったり、罠を購入してダンジョンの外からくる敵やらなんやらを撃退して引きこもりを続ける、そういう存在のことを言うらしいことだ。
これらの購入するためには【Dポイント】と呼ばれる仮想通過的な何かが必要なようで、それを稼ぐためには、ダンジョンに侵入してきた外敵を撃退するのが一番とのことだ。
「いや、死ぬよりゃましだけど、さすがに元一般人に殺人は無理よ?」
なお、パソコンの画面には購入画面とは別に【ダンジョンを開園する】という項目が目に留まる。
……つまりやろうと思えば、一生ダンジョンの出入り口を閉じたまま一生誰にも会わず生きていくという選択肢も無きにしも非ずというわけだ。
「いや、さすがにそれはねぇよ」
そんなむなしい一人突っ込みをしつつ、最後に自分のステータスを確認した。
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名前:アマノ
性別:♀?
職業:ダンジョンマスターLV1
種族:サキュバス
スキル:【魅了】
【発情】
【眷族化】
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この画面を見ると改めて自分が性転換してしまったという事実に涙が出てくる。
なお、伝承ではサキュバスは相手の望む異性の姿になるといわれているが、一人暮らしセットについてきた手鏡には、ばっちり自分の好みのタイプの女性のワイルドな悪魔コスプレ姿が映っていたのは記憶に新しい。
で、スキルの【発情】と【魅了】は文字通り、相手を発情させたり、魅了して操るスキルのようだが、今ここには自分一人しかいないからよくわからない。
で、最後に【眷族化】これだけは他と毛色が違った。
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【眷族化】……対象の生物か非生物に関わらず、自分の【眷族】モンスターへと改造、強化することができる。
あなたの【眷族】にした魔物とは以降、支配及びつながりを持つことができる。
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「おお!もしかしてこれすごい……すごくない?
これは俗にいう、【僕の考えた最強のモンスター】とか作れる流れか?
そういうわけか!」
そして、パソコンに映し出された、そのスキルの説明はこちらの男の子回路を全力で刺激するものであった。
実際その眷族化がどのようなものかはわからないし、そもそも自分が実際に異世界にいるかもわからないし、第一それのせいでこうしてTSしてしまったのだから、できることならすぐに元の世界に、せめて体くらいは戻したいのが本音である。
……が、こういうの方向性の異世界転移なら大歓迎である。
こう見えて自分は全力の育成型RPGゲーム世代、携帯なモンスターも電子なモンスターも大好きです。
自分と同棲代の男の子は幼いころ一度は【僕の考えた最強のモンスター】の落書きをしたことがあるはずだ、100%。
「……なんもわかんないから、まずはこれでいいだろ」
とりあえず、まずは初心からと少し部屋の外(地味に初ダンジョンだが、虫の一匹もいないため、何の感動もない)へ出てみて、小さな石ころを一つ拾って部屋へ戻ってくる。
そうして、石ころの前でどうやってスキルを発動させるのか試行錯誤する事数十分。
ようやく手ごたえを感じ、すると光始める小石、変形を開始し容積が変わりそうな小石。
「よし!よし!こいっ、こいっ!!」
今の気持ちを端的にいうのなら初めてやるゲームでガチャを回す時のような気持ち。
ようするに、これが当たりかハズレかもわからないが、それでも自分の手持ち兵が増えるそれだけでわくわくするものだ。
その小石に包まれた光が最大限に輝き、自分の期待もその光の強さと同じくらい最高潮に高まった結果……!!
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▼【失敗】!!
注意・あなたがこれを【眷族化】するにはレベルが足りません。
レベルを上げなおした後、再度挑戦することをお勧めします。
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「はー、クソクソ、ほんと異世界ってクソ」
そうして再び自分はセット購入で手に入れた煎餅布団の中へと潜り、全力で現実逃避するのであった。
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