5.冷凍する
対象を冷凍して切断する。
これが冷凍装置に感じた二つの可能性の二つ目である。
検証のために短剣と同じタイミングで丸鶏を一匹、冷凍装置の庫内に放り込み凍らせてみたのだが、これにはかなりの時間を要することになった。短剣とは違い質量が大きかった為、丸鶏が完全に凍るまでには丸一日以上の時間を要したのである。
そんなわけで、ようやく検証を行えたのは三日目の夕方、場所は同じく魔法屋である。
凍った丸鶏を冷凍装置から取り出し、まず最初に行ったのが針鋸で切断することだった。
針鋸による切断は否定されたが、それは肉の弾力性による物ではないかと考えたのだ。ぐにぐにと表面が動くためにオオハリネズミの針のキューティクルが上手く引っかからず切断が出来なかったのであれば、冷凍してその弾力性を奪ってやれば切断できるのではないかと考えたのだ。
結論としては、極めて難しいというものだった。
弾力性は奪えたものの、今度は凍らせたが故の硬度が高い壁となった。
冷凍した鶏肉は非常に堅く、針鋸では全く太刀打ち出来なかった。いくら擦りつけても冷凍した鶏肉は削れることなく、ただただ表面をやんわりと凹ませるに過ぎなかった。
次に僕が試したのは、床に叩きつけて割る、という方法だった。
堅い物質であれば、切ることは難しくとも叩き割ることなら出来るのではないかと思ったのだ。
僕は全力で、凍り付いた丸鶏を床に叩きつけた。
結局、凍らせた丸鶏は何度床に叩きつけても割れてはくれなかった。仮に割れたところで、骨を切断することは出来ないだろうというのがニーベック医師の見解だった。
何を凍らせたところで切断面を再現できない。
冷凍装置を利用してみたが、僕は望んだ結果を得ることは出来なかった。
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