家路
ハルミチ セイジ
午後6時2分
校舎を出ると、眼球を刺す夕日は既に彼方へと消え、代わりに暗闇が町を包み込んでいた。
冷ややかな風が肌を撫でる。どうやら夏の終わりが到来したようだ。
焼かれるような暑さに身を投じる日々ももうおしまいらしい。せいせいするような、どこか寂しく感じるような不思議な気分に苛まれた。
渡り廊下を横切り、校門を出る。
どこからか夕飯の香りが漂い、一日の終わりを感じさせた。
ぽつぽつとあかりがつき始める街灯のしたをくぐり、河辺のベンチに腰を下ろし、町を眺めた。
駅ビルのコンコースからけたたましい程の光彩が夜の町に散開していく。
首をもたげて空を見上げる。先程までの燃える様な夕日の面影は既に無く、深い深海のような青がそこにはあった。
光り輝く世界と深い闇の世界の均衡を保つこの場所は本当に美しい。あらゆる喧騒やあらゆる言語に隔離された聖地が確かに存在していた。
我々は無数の星々に見守られながら今この生を尽くしているのだ。
家路 ハルミチ セイジ @harumichiseiji
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