瀬戸口くんは恋愛アンチだから恋なんてしない。
羽海野渉
第1話 俺が恋愛アンチたる所以について。(1)
恋愛とは何か。
一高校生である俺が考えるには大きすぎる問題ではあると思うがどうか聞いてほしい。
辞書を開いて恋愛について引いてみよう。意味を調べてみるとここには「互いに恋い慕うこと」だとか「互いに恋い慕う感情のこと」などと書いてある。
互いに恋い慕う。
この二つの項目に共通するのはここだ。
動作なのか感情なのかはさほど問題ではない。恋愛という事柄において非常に重要なのは「互いに恋い慕う」ことだ。
さて、恋愛についてあなたはどういう風に考えているだろうか。
そんなの簡単だよだとか、いっぱいしてきたよ、っていう人もいるかもしれない。
もしくは自分にはハードルが高すぎてできるはずがないとか。
解る。
どっちの気持ちも理解できる。
確かにこの世の中ではこの意味に沿ったように様々な人々が恋愛しているように見えるだろう。
ドラマだとか小説だとかでも多くの作品で恋愛要素は絡んでくる。
恋愛して結婚して子供を産んで、というのが常識だった時代もあったかもしれない。
もちろんこれは子孫を残していくという動物の本能的なところも残っているから、俺たちが人間である以上一生付き合っていかなければならない問題だ。
現に数千年前の哲学者も俺が問いかけたテーマと同じことを考えて結論づけた。
それでも多くの人々がこのテーマに今なお挑みつつけているということは、その結論だけでは納得できないということではないだろうか。
しかし、現実は非情だ。
もしあなたが「これは恋愛だ」と考えていたとしよう。
あなたには好いている相手がいる。
イケメンでも可愛い女の子でも誰でもいい。
あなたが好意を寄せている人だ。
その人といい感じの仲になっていたと仮定して、もしさっきみたいなことを考えているとすればそれは間違いだ。
何故ならそれが恋愛という保証はどこにもないからだ。
辞書の意味を思い返してみれば文頭に「互いに」という言葉が付いている。
この三文字が非常に重要だ。
先ほどの例に戻って考えてみよう。
自分は好いている相手に対してこれは恋愛だと考えている。
だとしてもまず相手が自分を好いていなければ「互いに」という条件を満たさなくなるからそれは恋愛ではない。
もし幸運にも相手が自分に好意を示したとしても、それが口先だけの可能性もある。顔に出ないポーカーフェイスの演技かもしれない。
口先だけは信じれない。
というよりも、他人の思いなんて誰も知ることはできないのだ。
自分の気持ちを知ることができるのは自分だけだ。
その時点で「互いに」とかいう言葉はテレパシーでも使えない限り立証不可能だ。
実際に互いに好意を抱いていたとしても相手からどう思われるかなんてわからない。
自分の言葉や表情でムダな感情を抱かせることすらあるのだ。
他人を信用してはならない。
もしここで「相手を信用してこそ恋愛なのではないか」という声があったとする。
好いていると言ってくれている相手を信用できないのかということだ。
それはもちろん信じるべきだろう。
とはいえ、あくまで言葉の上だけでだ。
相手の好いているという言葉が確証でない以上、言葉の上だけでも信じておく。
どうせ自分はその相手に好意を寄せているのだから、それくらいはできるはずだ。
良心が痛む? そんなことよりも確証の持てない「恋愛」なんてのにうつつを抜かす方がどうかしている。
恋愛はさっき言ったとおり「互いに恋い慕う」ことだ。
しかしその確証は確実にできない。
ならば、それは恋愛とは呼ぶことができない。
また、自分が相手に対して「好いている」とかいうこれまた実証のできないものを抱いていることも確証できない。
つまり恋愛とはまやかしだ。
幻想だ。
一時の過ちだ。
そんな不確定なものに時間を浪費するくらいなら効率の良いことをしたほうがいい。
勉強だとか、スポーツだとか。
結果と課程がはっきり目に見えるものが恋愛とかいうものより有意義だ。
よって俺、瀬戸口雅紀は。
恋愛というものは高校生活に不必要なものと位置づける。
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