少年はそして鬼になる
鹿子
第1話 森のなかで
目の前には巨大な口と牙があった。人の頭がまるまる入ってしまわんとばかりに開かれた口には,唾液が滴り,その牙はあまりに鋭利だった。
ハァハァ,と生臭い呼吸が鼻につく。唾液が獣の口から今か今かと溢れる。
静かな森の中ではただ,その四足の獣の呼吸だけが響いていた。
獣に相対して,少年は立っていた。切れた額からは血が流れ,左目は血に覆われている。
しかし,肩を震わせながらも,その目は獣を捉えていた。
「来いよ化物,格の差ってもんを見せてやるよ」
少年は化物に対して発した。拾った棒きれに力を込める。
獣は少年を睨みつけつつも,周囲をうなりながらゆっくりと回っている。
「びびってんのかよ」
少年はまた声を上げる。
「来いよ,化物ォ!」
少年は怒鳴り上げた。
その声に呼応するように,
「ブァァ!」
獣の牙が少年に飛びかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます