6 政策分類図

図:https://19084.mitemin.net/i380489/


『文明の星』理論(仮説)では、技術と政策の内部分類も、

対称的・合理的に説明することができます。

この図では政策の側の分類を示しました。


文明活動の本体である経済・社会活動を、

豊かにするのが技術、健全に保つのが政策だとすると、

政策はその経路ルートによって、

次の4種類に分類できます。


(1)経済・社会政策……直接ルート

経済・社会活動に直接働きかけて、

人々の利害関係を調整することにより健全に保つ、

産業・金融・財政政策や福祉・保険・労働政策です。

文明発展に伴い、制度・政策は分権化するので、

後述の技術的政策に続いて、

経済政策さらには社会政策でも、

民間団体や個人の役割が増してきたと思います。


(2)人的資源政策……間接ルート

教育政策、保健(公衆衛生)政策のように、

政策を立案・支援・活用・改善できる人的資源を、

育成・確保する政策です。

保育は児童福祉政策に含まれますが、

教育機能の向上や幼保一元化という形で、

実質的にはこの分野に移りつつあるかもしれません。

政治的な事情から語りにくい場合もありますが、

特にアメリカなどの移民国家や富裕な国家では、

移民政策や海外労働者受入れ政策も、

ここに含まれるかもしれません。


(3)行政管理政策……自助ルート

広い意味では経済・社会活動の一部ともいえる、

制度・政策の立案・実施それ自体を助ける技術です。

政府機関をひとつの小社会と見れば、

この行政管理政策を組織・予算運用や人材育成、

施設整備のための政策に分けて、

他の(1)(2)(4)の政策区分に含めることもできます。

しかし、行政管理政策は他の政策を実現する政策として重要であり、

また次の図8で述べる技術分類の、

企画支援技術オペレーションズ・リサーチ〟の分類基準にもなるので、

ひとつの政策分野と見てよいと思います。


(4)社会工学的(いわゆるハード的)政策……互助ルート

同じく、広義では経済・社会活動の一部でもある、

技術の健全な開発・普及を助ける政策です。

これはさらに、相手方となる技術の分類に応じて、

3つに分けることができますが、

(複雑になるので、図には描きませんでした。)


(a)広域支援ルート …… 社会工学的政策

資源保全・環境美化や防犯・防災を担う、

自治会などの団体や市民の活動を助けるため

社会工学的な組織・啓発技術を用いる政策です。

これは、経済・社会活動全体を大きく変えてしまう、

主力(中核)技術の悪用・誤用・副作用を防ぎ、活用するために、

自らもまた広く経済・社会活動全体に働きかける政策といえます。

豊かな工業社会では、大災害時に消防署だけでは手が足りませんし、

皆でルールを守らないと街はごみであふれてしまいます。

便利な情報社会では、特殊詐欺対策に金融機関の協力も必要です。

名前の印象とは違い、政策実施を助ける社会工学の力を借りつつ、

実は大きな主力(中核)技術の活用を助ける政策です。


(b)部分支援ルート …… 社会基盤インフラ政策

主力(中核)技術を物的資源に具現化する、

土木・電気・通信技術など関連(周辺)技術の健全性を保つため、

一般的な経済・社会活動からは得にくい支援を提供する技術です。

例えば、自動車や家電・パソコンなら民間市場が供給できますが、

公共施設や交通・動力エネルギー・通信網など、

社会基盤インフラストラクチャーの建設には公的な出資や調整が必要なので、

そうした大規模な物的資源の整備を行う政策です。


(c)特別注文カスタムメイドルート …… 研究・開発政策

科学・技術の研究・開発自体の効率性を高めるために、

利害を調整する政策です。

広い意味では経済・社会活動の一部ながら、

先行投資、情報の守秘・共有、社会的影響への配慮などの

必要性がある、研究・開発活動の特殊性に応じ、

いわば特別注文カスタムメイドの支援を提供する政策です。

英国が産業革命、米国が情報革命に成功した大きな理由に、

民間組織も含めた研究・開発政策の努力があげられます。


もっとも以上については、理論的な分類であり、

現実的には重なることもあります。

技術同士、政策同士、技術と政策の対象はつながることがあり、

政府や研究機関の活動も広義では経済・社会活動の一部であるうえ、

実質的には企業などでの技術開発や政策決定も多いからです。


校舎の建設は、教育政策と共に防災社会基盤インフラ政策にもなりえます。

新技術による通信網の開発・建設支援は、

研究・開発政策にも、社会基盤インフラ政策にもなり得ます。

企業による先端技術開発への支援は、

研究・開発政策と共に産業政策にもなりましょう。

同じ福祉法人や財務諸表が、組織・会計技術の成果であると共に、

経済・社会政策の手法である、といえるような場合もあります。


そうした重なりを考えるのも面白く、

さらなる政策の立案や連携に役立ちうるのではないかと思います。

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