死にたくなければ姫には近づかないことだ

水無月未奈

第1話 魔力あった方がいいがありすぎては駄目だ

「お嬢様ー!使っていいですよー!」


 俺がそう言うと、お嬢様は杖を持って魔法を放った。お嬢様の金色の髪がふわりと舞い上がると、その瞬間辺りは真っ白になり、辺りの地形は変わってしまった。目測二十メートルは離れたはずだが、靴の爪先ぐらいまで魔法が届いた。


死ぬかと思った。


「どうかしらー?よくできたでしょー?」


 俺は冷や汗をかきながら、冷静に言う。

「お嬢様ー!使う魔法は一番初級の技なはずですがー!どうしたらこんな威力に変わるんですかー!」


 お嬢様は、頬をぷくーっと膨らませると

「うるさいわねー!あなたの教え方が悪いんじゃないー?というか、そんな遠くからじゃなくて、もっと近くに来て教えなさいよー!」


 お嬢様は私を消し炭にでもする気でしょうか...


「速く来ないとクロノスに言いつけるわよー!」

 クロノスとは、私の師匠だ。四賢者の一人で時に関する魔法を使う。お嬢様がぶっ壊した地形や物などは師匠が尻拭いをするという、少し可哀想にみえる。


「はやくー!」

 お嬢様はご立腹のようだ。速く向かわないと師匠からの割りと洒落にならない嫌がらせが来てしまう。


 俺は急ぎ足でお嬢様の所へ向かう。

 その時に目の前の空間がグニャリと歪む。中から、あしが出てきて俺の顔を踏み台にするように出てきた。


「あれ?なんかふんじゃったかな...?」

「師匠、絶対わざとでしょ」

「いや、しょうがなくね?寝起きでまさかの目覚ましが、さっきの爆発なんておかけで俺の昼寝が...」


 確かに、似合っていない丸メガネの奥に眼光がいつもより、鋭い気がする。

「派手にやったな~また、直すのもただじゃないんだぞー」


 師匠はぶつくさといいながらも魔法の詠唱を始める。師匠の辺りに魔方陣ができる。


 その間にお嬢様をこちらに避難させる

「師匠、いいですよ」

「レストア」


 そういうと、陥没していた地面が瞬く間に戻っていく。

 修復する作業を終えたあと師匠は

「これ、割りと魔力もっていかれるから、そんな大技習わせる前に初級からしてね。」


 師匠は少しぐったりした感じで言った。

「え?あれ、俺じゃあな...」

 言い切る前に師匠は時空またグニャリと曲げて帰ろうとする。


「話を聞いてください師匠」

「え?聞いてる聞いてる、一緒に帰って夕飯食べるんでしょ?」


 そう言うと、お嬢様からお腹の音がグーっと聞こえた。赤面しつつ、掌を俺の頬におしつけ、ぎゅーっと向こう側を向かせるよう追いやられる。


「ひあ、違いまふけど...まあ、いいやなら食後にでも話しますよ」

「そうか、わかった。じゃあ早く乗れ」


 それ、乗り物の部類じゃない気がする。まあ、いいや

 なかにはいると目の前がキッチンだった。俺は師匠の顔を見ると師匠は

 にひっとわらった。師匠なりの粋な計らいってやつかな?そう思いつつ、キッチンで料理を作る。今日は気分がスープだったから、野菜をたくさん使った具だくさんのスープにした。

 察した師匠が、スプーンや容器を三人分用意してくれた。

 その時スープが出来上がった。

 俺は容器に八分目くらいにそそぎ、みんなに渡す。

「いただきまーす♪」

 気分はご機嫌だったのか、それともとてもお腹が空いてたからか知らないがとても美味しそうに食べてくれる。

 師匠と俺も、互いに食べだす。

 お嬢様がとても、ニコニコしながら食べるもんだから、俺もつい頬が緩んでしまう。

 この後、食事が終わり片付けに入る。その間、二人は別々にお風呂に入る。いつも、お嬢様が一番目に入る。大抵なら...

「キャアアー!」

 始まった。師匠の悪い癖だよ。覗き見はするなってあんなに言ったのに...

 ドタドタと家のなかに足音が響く。

 お嬢様は、タオルを巻いて落ちないように左手でしっかりともって走っている。対する師匠はそれを、あしらうかのように振る舞いながら走る。

 赤面しつつ、お嬢様は言う

「待てー!乙女のからだ見てただで済むと思うなよー!」

 対する師匠は、

「乙女って言っても、お前そこまで発達してもないから、あれか?心だけが乙女ってか?」と

 師匠はニヤニヤしながら言う。

 お嬢様は、今のにきれたのか右手に持っていた石鹸を投げる。弾道は低かったがそのまま滑って師匠の足を滑らせる。

 ガッシャァーン!と大きな音をたてて角にぶつかる。

 ペタペタと死の足音が近づく。

 お嬢様は、にこーっと笑っていた。

 怖かったから俺はまだ途中の洗い物を済ませる。その際に、師匠の悲鳴が幾度となくこの家を響かせた。

 その後、お嬢様がお風呂からでたあと、俺はお風呂に入った。頭や体を洗い終えたあと、ふと気になった。

 師匠はどうなったのかと、夕食後は大事な話があるって言ったから多分忘れてないとは思うけど...

 早速俺は行動にうつす。俺はまず、師匠が頭をぶつけたところまで戻った。

 だが、いない

 だから、師匠の部屋にも行ったがどこにもいない。

 気になったので、お嬢様からきいてみる。もしかしたらもうねてるかもと思ったが、まだ起きてた。

「どうしたの?」

「いや、師匠を知らないですか?どこに言っても見つからなくて」

「さあ?でもあんま見ない方がいいかもよ?」

 何故?と言おうと思ったら

「いや、割りとマジでやり過ぎたなあって思うくらい痛め付けた。」

「あっ、そうなんですね」

 なら探索は一晩開けてからにするか。

 それぐらいじゃないと、師匠も会わせる顔がないだろう。いや、そもそも顔があるのか...?

 疑問を抱きつつも、お嬢様の部屋を後にする。

 自分の部屋のベッドにダイブするような形で飛びうつる。

 ベッドで横になるとすぐに、眠気が襲ってきてしまった。

 明日のこととかお嬢様の魔力の件とか考えないといけなかったのだが、そもそも眠気に抗うような気力がない。そのまま俺は眠りに落ちた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死にたくなければ姫には近づかないことだ 水無月未奈 @Teriyaki765

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ