第二段

むかし、男がいた。

奈良の都はうつり、こちらの都はひとの家もまだまばらであったとき、西の京に女がいた。

その女は世間並みを超えていい感じであった。容姿がすごくいい、とかではなくて、なにか振る舞いや言葉遣いからただよってくる感じが、とてもよいひとだった。ひとり身、ということでもなかったらしい。それを、かのまめ男は、彼女とうち物語して、帰宅し、どう思ったのであろうか、歌を送った。時は弥生のついたち、雨はそぼ降る。


あなたに出会ってから

夜はない

昼はない

あるのは春の夢

憂い、憂いと

甘い、雨糸

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る