春はすぐそこ・・・
勝利だギューちゃん
第1話
冬の足音が、近付いてきたある休日、
私は、外へ出た。
テストも終り、今はテスト休みだ。
学生時代の貴重なこの時間を満喫しよう。
十分に着こんだ。寒さはしのげるはずだ。
もし寒ければ、何か買おう。
「行ってきます」
「気をつけてね」
家族にそう言われて、そとへ出た。
この辺りは、比較的暖かいが、さすがにこの時期はやや寒い。
でも、泣きごとを言えば、北海道の人に笑われそうだ。
しばらく歩いていると、すこしのどが渇いた。
自販機で、ホットミルクティーを買った。
(近くに公園がある。そこで飲もう)
そう思い公園に急いだ。
公園に辿り着くと、ベンチに腰掛ける。
「ふぅ」
一息ついて、紅茶を口に含んだ。
身も心も温まる気分だ。
ふと見ると、カメラを片手に歩き回っている男の子がいた。
「あの子はたしか・・・」
その子に駆け寄って声をかける。
「尾崎くん、なに撮ってるの?」
クラスメイトの、尾崎勇気くん。
話した事はあまりない。
彼も、あまり周囲に溶け込もうとしていないようだった。
「やあ、栗山さん、何でもないよ」
私の名前を覚えていてくれた。
それは、とても嬉しかった。
でも・・・
それだけ言うと、彼はまた撮影し始めた。
「ねえ、なに撮ってるの?」
「わからない」
「木のようだけど・・・」
「半分正解」
「残りの半分は?」
「内緒」
それだけ言うと、彼はまた撮影し始めた。
「もう半分は何だろう?」
気になった私は、その日はあきらめて、後日見せてもらう事にした。
見せてくれるかどうか、わからないけど。
数日後、クラスと尾崎くんに嘆願すると、快く見せてくれた。
私は、わくわくしながら、写真をみた。
でも、そこには当日彼が撮影していた、木しか写っていなかった。
「ねえ、尾崎くん、もう半分は何?」
「わからない?ちゃんと映っているんだけど・・」
「うん、教えて・・・」
すると尾崎くんは、笑顔で答えてくれた。
写真の一枚に指をさした。
「あっ、そういうことか・・・ありがとう」
尾崎くんが撮影していた写真に写っていたもの。
【そこには、春を待つ、木の葉の赤ちゃんがいた】
春はすぐそこ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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