未来の始まり、もしくはとある馴れ初めの締めくくり
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丹堂妙乃様へ。
拝啓。未丹の桜も綻んで、枝が薄紅化粧して麗らかな日々となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
先日の出来事は多くの、それは多くのことを私に考えさせるものでした。その中で一番考えなければ何かと言えば、やはり、貴女を不安にさせてしまっていたのに気づかず、それに加えて三日も姿を消していたことにも危機感を覚えずに、そんな日もあるかと過ごしてしまったことに尽きます。
私は、貴女に不安を抱いてほしくはありません。心の底からそう思います。私は貴女のくるくると楽しく変わる表情がとても好きで、その中で最も好きなのは、夏の木漏れ日のように眩しく煌びやかな笑顔と、その陽目細しい瞳です。その明るさに、私の疲れや苦しみは、全て消し去られていくのです。
私は、以前にも言ったかもしれませんが、そんな貴女ともっと多くの時間を一緒にいたいのです。寄り添って生きていきたいと、今、どんな願いよりも強く願っています。
私は、貴女に未言のことを教えたかもしれませんが、最近は、貴女が手紙に書いてくださる未言たちを通じて、以前までよりも深く新鮮に、未言のことを知ることができていると実感しています。それはとても楽しく、幸福で、未言屋店主が告げた、未言を知ることで幸せになる機会を増やしてほしい、という祈りを、貴女こそが実現していると感じるのです。
今の私には、妙乃さん以上に、未言を知る喜び、未言を見つける楽しみ、未言と共に生きる幸せを強くしてくださる人は誰もいないです。
ですから、私、三栗隆文は、丹堂妙乃さんと、これから生きる生涯を寄り添って過ごしていき、苦楽を共にして、どんな困難も二人で乗り越えていき、全ての幸福を二人で一緒に経験していきたいと思っているのです。
どうか、私のこの想いに答えてくださるのであれば、結婚をしてください。
お返事、お待ちしております。すぐには答えられなくても構いません。妙乃さんが納得のいって、私に残りの人生を賭けてもいいと思えるまで、もしくはそうは思えないと判断できるまで、しっかりと考えて決断してくださるのを、いつまででも待ちます。
このことについて、絶対に急かさないと約束しますので、どうか真剣に考えてください。言うまでもありませんが、私は生命を賭けて、本気で言っていると誓います。
それでは、暖かな春日向で心地よい読書ができるこの季節を、未言と一緒に楽しく過ごしてください。敬具。
三栗隆文
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