第31話 ジャンプ台

『ジャンプ』と言われても、少年漫画が借金しか思いつかなかったが、

お店に来る地元のお客様は、みんな口裏を合わせたように

『ジャンプ台』を連呼する。


??????????

さっぱり意味が判らなかったが、

私が白馬にやって来た年の1月だか3月だか、そこいら辺りで

『冬季長野オリンピック』というものが開催されていたらしい。

オリンピックイヤーだった事も、

長野で開催されている事も知ってはいたが、どこか他人事で

今、私が来ている『ここ』も開催地だったとは・・・。


お若い方は、知らないかもしれないが

(若くないが、私もほとんど知らない)

スキージャンプ競技の団体で、感動の名場面『原田さん大泣き』のあった

『ジャンプ台』だそうで・・・。


『だから?何?』

と、言ってしまうとアレ(何度か大喧嘩に発展した)なので

『あぁ、なんかテレビで観たかも?』とあいまいに胡麻化していた。

実際、白馬のジャンプ台は、夏場は強化合宿や冬場は大小様々な大会など

活用されてはいたが、私が白馬に滞在していた数年間、ただそれだけだった。


私が、初めて白馬に行った夏に『フジロック』的なイベントが行われたが

近所の住民や宿泊施設、その近辺の観光組合までが苦情をいい、

1年1度キリで終了した。

冬はスキー場も近い事もあり、それなりに人がいたが

大会や強化合宿がない時は、閑散としていた。


オリンピックの魔物はこれだけにとどまらず、

やれ、ボランティアをやっただの、あの選手と知り合いだのと

色々と言われたが、そもそも興味がなかったので

適当に聞き流していたが、

スキーもボードもしない、オリンピックに興味すらないのに

『なにしに来たの?』と聞かれてビックリした。

と、同時に、ここは終わって行く、過去の観光地になるのだろうな、と思った。


結局、数回、ジャンプ台には足を運んだが楽しい思い出は1つもない。


ジャンプで、1番ビックリしたのは、選手に熱烈な『追っかけ』がいる事だった。

有名な国内のジャンプ選手には、1回ぐらいはお目にかかった事があるが

そのうちの数人に熱烈なファンがいて、遠征のたびにやって来る方々もいた。

アイドルもバンドマンも韓流も、興味がない人には

全く理解不能だが、スポーツ選手に『追っかけ』が存在する事、

ごく少数ではあるが、ファンに手を出す人は、

どの世界にもいる事を知った。


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