毒を喰らわば皿まで

橘 雨月

第1章 小世界

第1話 橋の下から拾って来たんだよ

幼い頃に、よく母から聞いたセリフ。

『橋の下から拾って来たんだよ』

最近では耳にすることもなくなったが、

私の幼少期には説教の後の鉄板的な『それ』だった。


その鉄板文句を、

私は、素直に受け入れていた。

『本物の親は、いつか迎えに来てくれるのだろうか?』

『私は、その人を探しに行ってもいいのだろうか?』

と、日々、悶々と考えていた。

素直と言えば聞こえはいいが、

夢見ていただけだろう。


母は事実、血の繋がった母であり

父もまた、そうであった。


幼少期の思い出は、このセリフであり

よく耳にしていたが、

このセリフを、母が私以外に言うのを聞いたことはなかった。

私には、1つ年上の姉がいたが、

彼女にそれを言っている場面は記憶にない。

母が私と彼女とに言い聞かせていたのは、

『どちらも平等』であった。


そのセリフも私は素直に受け止めていたのだが、

実際に『平等』だと感じた事は

結局、今現在に至るまで、感じた事はない。


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