夢から覚めた夢 3
スカイハイタワーの外へ出る。あれだけ強かった風が嘘のようにやんでいた。雲は厚かったけれど、隙間に青空が覗く。雲間から差す神々しい光と、無骨なパトカーや警官のとりあわせがアンバランスだった。生ぬるい外気が僕たちを包む。
僕とマリーは立入禁止と書かれたテープをくぐり、見物人の間をすり抜けた。振り返って仰ぎ見たタワーは、心なしか微笑んでいるようなみずみずしい青さだった。
人垣から少し離れてふと、彼女が、指輪で先生を助けられないかと言った。
僕は、それだ、と色めきだった。が、役目を終えたためか、もはや指輪がなんら効力を示すことはなかった。僕たちは肩を落とした。
タワーの隣接する公園を歩きながら、ひとまずログアウトして父さんたちにすべてを報告しよう、と話しあった。ことの顛末をまずエマさんに電話で伝えた。彼女は、よくやったわね、おめでとう、と心から僕たちをねぎらってくれた。
「代わりに恩師が犠牲になりました。僕もマリーも先生を尊敬し慕っていたのに」
ソフィア先生の訃報にエマさんはしばらくの間、沈黙した。次に僕は、驚くべき申し出を聞くことになる。
「――その先生は、私が復活させましょう」老婦人の言葉に僕は耳を疑った。「ウラヌスの管理者権限が解放された今、私なら可能よ」
まさか。でも。コクーンの夢は、だって、現実世界と同等で、そんな――
にわかには信じがたい話に惑う僕の横で、マリーが「なに? エマさんなんて?」と困惑する。
電話の向こうで婦人は、粛然と、しかし慈愛をたたえた声で告げた。
「死者の蘇生は、本来は厳格に排除すべき禁忌。しかし、あなたたちの敬慕と、ウラヌスへの勝利を祝して、今回に限り特別に彼女の命を戻します」
ソフィア先生が、生き返る――
「うおおおああっ!」
僕はがらにもなく、天に拳を突き上げ歓喜した。信じられない。先生が、先生が助かるなんて。
突発的な僕の反応にとまどうマリーに話して聞かせる。彼女は「うそ……!」と両手で口元を覆う。そのまなじりに涙が光る。僕も危うく泣きそうになっていた。
先生に会ったら、マリーと一緒にとびっきり悪いことをしてお説教をもらおう、そう決めた。
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