夢から覚めた夢 2
スタッフに誘導されてタワーを降りながら、マリーから話を聞いた。
彼女は空中で停止しているときも意識はあったが体は動かせなかった、しばらくして突然、玉座に座っていた、足元には僕が倒れていた――
彼女の話を聞くうち、僕は彼女の身代わりになってタワーを落ちたことを思い出した。彼女との入れ替わりは成功したんだ。
それならどうして僕は最上階にいたんだ。下で墜落死しているはずだ。
地上階で事故――
嫌な予感がして、中央展望台で乗り換えエレベーターを待つ間、事故についてスタッフに尋ねた。
彼は、言いにくいことなので、と言葉を濁したけど、食いさがると、女性が転落した、と教えてくれた。
マリーもその話でなんとなく想像がついたのだろう。僕とともに顔を青くしていた。
その顔は、地上階に到着していっそう青ざめた。あれだけいた客が大幅にいなくなっており、代わりに何人もの警官がそこここでなんらかのやりとりをしている。
フロアの中央にはブルーシートが敷いてあった。人間大に盛り上がっている。シートの端から凄惨な血しぶきが見えた。彼女は口元を押さえ、うっと声を詰まらせた。
警察が入場者に事情聴取をしているとのことで、フロアの端でほかの客と一緒に順番待ちをさせられた。
誰もがブルーシートのほうを見ながら、若い女性なんだって、ずどんってものすごい音だった、などとひそひそ話した。マリーはシートには目を向けず黙りこくっていた。
もしかしたら。僕は気になって彼女に聞いた。「僕が、先生と君を入れ替えたと思っている?」
「クコがそういうことのできる男の子じゃないってわかってる」彼女は僕をしっかりと見つめて言った。「私が玉座に現れたとき、わずかの間、クコじゃなくてソフィア先生が見えたの。でも、先生は一瞬でクコに変わった。つまりこういうことだと思う。
先生は、私と入れ替わったクコと、さらに入れ替わった。
私の指にふたつの指輪がはまって玉座の肘かけに乗ってた。プロジェクトの失敗で、先生は本来のソフィア先生を取り戻したんだよ、きっと」
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