夏と花火と初めてのキッス 7
「あーっ、お姉ちゃんたち、手つないでる。恋人つなぎだー!」
「べったりくっついて、やっらしいの」
後ろの僕たちの様子に気がついたミリーとグミが冷やかす。
「あんたたちっ。ミリーとグミはいうことを全然きかなかった、って報告されたいの?」
赤く染まった顔でマリーは監督権を振りかざす。弟たちはあわてて口を押さえた。今夜ばかりは姉と兄には逆らえない。
ミリーはターゲットをグミに変えて、あたしたちもやってみようよ、と手を伸ばす。グミは、触んなヘンタイ、チジョ、と逃げ、ミリーが彼を捕まえようと走った。おまえたち、と制止しようとした僕の手を、マリーがぎゅっと下に引いた。
「ほっとこうよ。戻って来なかったら、探しに行けばいいんだし。それに」彼女は伏し目がちに身をよじらせた。「邪魔が入らなくていいじゃない」
ごくり、と僕は喉を動かした。今夜の彼女はいちいち大人っぽい。
その密やかな口調も、なにか意を決したような赤らむ顔も。
めいっぱい指を食い込ませて固く握る手も、落ち着きと華やぎが調和した浴衣姿も、全部。
親子連れや友人同士、カップルらしき男女が行き交ってそこらじゅうに人があふれ、火の花の開く音が鳴り響く。
辺りは騒がしいはずなのに、僕の耳には自身の鼓動と彼女の声しか聞こえていなかった。
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