私が小説家を目指したい理由
工藤 流優空
本嫌いが、作家になりたいと思った現在まで
「本嫌い」が出会った、運命の一冊。
この度、自主企画にて「自己紹介エッセイ」なるものがございましたのでふと、
「自分がどういった作品に影響を受け、どういった成分で今の自分になったのか」
を書き記しておきたいなぁと思いまして、このようにパソコンのキーボードをたたいています。
エッセイなどは書いたことがないもので、つたない文章になるかと存じますが、よろしければお付き合い頂けますと幸いです。
さて、私は元々「本が嫌い」でした。小学1年生までは。小学校では「10分間読書」なる時間があり、必ず毎日10分、読書をしなければなりませんでした。漫画は許可されておらず、私はタイマーが0分になり、けたたましい音を立ててくれるのをいつも心待ちにしていた記憶があります。
そんなある日のことです。クラス全員で10分間読書の本を図書室に選びに行くという授業がありました。そこで私は、担任の先生にある本を手渡されます。
ミヒャエル・エンデ作『はてしない物語』。総ページ数448ページ。
担任の先生は、おそらくとてもいやそうな顔をしたであろう私に言いました。
「この本を一週間で読むことができたら、ほめてあげる」と。
私は元々、負けず嫌いな性格ではありませんでした。自分は自分、他人は他人。そういう考え方で常にマイペース。そんな私でしたが、小学生の私にとっては、「ほめてあげる」という言葉はとても魅力的でした。いつも怒ってばかりの先生に、ほめてもらいたい。そう思った私はその本を借りて教室へ戻り、その日の授業が終わると大判のその本を抱きしめて家に帰ったのです。
一日に何ページ読めば一週間で読めるのか考えつつ、私は本のページを開きました。当時の私からすれば、難しい言葉もあったかもしれません、分からない言葉は辞書を使いながら、少しずつ読み進めていきました。
最初はページにぎっしり詰まった文字を見てげんなりしましたが、読み進めるにつれ、物語の世界に引き込まれていきました。夜は、母親に何度も部屋の電気を消されながら、それでも母の足音が部屋から去ったあと再び部屋の電気をつけ、ベッドの上で読み続けました。本嫌いの当時の私からすれば、考えられないことです。
そうしてなんと、一週間経たないうちにその本を見事読破したのです。最後のページを読み切り、裏表紙をそっと閉じたときの感動は今も忘れられません。
本を読み切った翌日、私は本を抱えて担任の先生に、読破したことの報告へ行きました。ここ数年、小学六年生ばかり担当していて久々に小学一年生の担当となったこの担任の先生は、たくさんの生徒から怖い先生と思われていました。そんな先生でしたが、報告を聞くと顔をくしゃくしゃにして自分のことのように喜び、私の髪の毛がなくなってしまうのではないかと思うくらい強い力で、私の頭をわしゃわしゃ撫でてくれました。
こうして世の中から読書嫌いの小学生が一人消え、読書好きな小学生が一人増えたのです。私と運命の一冊の出会いは、小学校の先生がもたらした一言によって、紡がれたのです。
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