異世界プラスチック製メガネ
飯を食いに行って戻ってきてからはルルはまた読書に戻り、シャリアはお茶の仕込みの確認をしたりしている。
俺はというと弾を薬莢に嵌める作業をしていた訳だが、これに関してはわざわざ言うことも無いだろう。
部屋の隅に少し大きい工具を設置する。その工具には円形で小さめの台があってその真ん中には浅めの穴があり、そこに薬莢とその穴に軽く入れた弾を置く。
そして台の脇あたりに付いてるレバーを引くと、その弾を乗せた台が持ち上がって台の真上にある小さな筒状のものとプレスするように挟むのだ。すると、ポンと軽い音が鳴る。これで弾を薬莢に嵌めることが成功だ。あとはこれを繰り返すだけだから特に言うべきこともない。
というわけで弾作りの話はもう終わりだ。ついさっき昨日のお姉さんから例のメガネが届いたからそれの確認をしていこうと思う。
出来上がったメガネだが値段は金貨一枚と大銀貨四枚だった。大きさとかは俺の顔に合わせてあって、加えた塗料のおかげで少しだけ青みがかっている。
もちろん度は入ってないが、砂埃とかならばある程度は防げるようだ。まあそれは形状によるものだけど。
熱には強く、余程強く衝撃を与えない限りは割れたりはしないが、あまりにも寒いところで使うと割れやすくなるという。
つまるところ、熱では溶けないプラスチックだ。元が樹液だから樹脂とかかもしれないけどそこら辺はよくわからないからプラスチックだ。
「ルルー、ちょっとこれ見てくれ。似合ってるか?」
隣の部屋、つまり俺が泊まる部屋だがそこのベッドの上で何かを書いているルルに声をかける。
「なーに?……うーん、似合ってるとは思うけどなんでそれを?」
「確かにそうですね」
椅子に座って何かを読んでいるシャリアも聞いてきた。
「えっとだな。まず俺って一応遠距離攻撃を専門としてるんだよな。剣とか持ってるし結構近接戦闘やってる気もするけど基本は銃での遠距離攻撃なんだよ。で、狙ってる時に砂埃とかが目に入る時があってさ。それが嫌だったから目に砂埃とかが入りにくくなるような物を作ってみたんだ」
「そうだったんですね。もしかしてその目に付けてるやつってさっき行った食堂のカップと同じ物ですか?」
「うん。トウって言う木の樹液から作ったものだな。軽くて丈夫。落としても割れないし何より見た目が良い」
「へぇー、私も欲しいかも」
「砂埃を防げるって言うのは便利ですね。ヤマトさん、私も欲しいです……」
シャリアも欲しいらしい。あまり彼女はそういうこと言わなそうだったけど欲しいものは欲しいって言うんだな。でもやっぱり最後の方は声が小さくなってるな。正直かわいいと思う。
「そうだな……じゃあ明日行ってくるといいよ。後で型を渡すけどこれはあくまで俺に合わせて作ってあるからもしかしたら合わないかもしれないからな?」
「わかったよー」
「わかりました」
すると、ルルが何かを渡してきた。
「ヤマト、これ使って」
「ん?なんだこれ」
渡されたのは二枚の紙だ。表面には魔法陣が描かれている。さっき描いていたのだろうか。
「それはヤマトの銃に仕込まれてた魔法を魔法陣にしたものだよ。と言っても片方だけだけどね。衝撃を弱める魔法が発動するから新しい銃の中に仕込めば良いよ。もう一つは音の軽減。これも同じように中に仕込めば良いよ。でもどれぐらい軽減出来るかはわからないからそこは気をつけて。あと、魔石を仕込まないといけないけど安いので良いようにしておいたよ」
ルルが得意げに教えてくれる。ルルは前から魔法をよく魔法陣へと変えていたけど今回のはさっき銃を貸してからあまり時間は経っていない。この短時間で描いたとすればびっくりだな。
「ふふっ、そんなことは無いよ。前から少しずつ読み取って文字に起こしただけ。でも前に作ったインクが残ってて良かったわ。でもこれで無くなっちゃったから補充よろしくね?」
「了解だ。ルル、ありがとな」
「全然いいよ。新しく魔法陣のコレクションも出来たしね」
「それならなによりだ」
ルルは珍しく喜んでいる。昔から天才と呼ばれていて魔法を扱うのには慣れている。だからわざわざコレクションしようとは思わなかっただろう。でもルルは魔法陣と言う存在を知って、文字でコレクションするという楽しみを知った。おそらく、最近はそれが趣味なんだと思う。
さてと、飯も食ったしあとは弾を作り続けるだけだな。本当だったらそろそろ俺の部屋からどいて欲しいところだけどもういいや。もう夜も遅くなりそうだからさっさと終わらせてしまおうかな。
俺はそんなことを考えつつ欠伸をしながら隣の部屋へと戻るのだった。
その後、とある部屋からは何やら空気が抜けるような音が一晩中続いたという……
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