第3.5発
学園都市へ
「な、何とか……間に合ったわね……」
「あんなに……走るなんて思いませんでした……」
「まさか……入口があんなに混んでるとはな……」
ここは城塞都市バルンガム……の船着き場である。
少々掻い摘んで話すと、一週間程かけて到着した城塞都市だったが、何かしらの事故があったようで入口がものすごく渋滞していた。丸一日かけてようやく自分達の番まであと少しということで日が暮れてしまい門が閉じてしまった。ということでその場で野営をし、翌日の日の出と同時に城塞都市の検問が開始され、なんの問題も無く入れたのは良いのだが、自分たちが乗る予定の船が出航するまであと一時間しかないことに気づき、御者さんにここまでの運賃を払い、そこからは船着き場に向けダッシュするのである。しかしこの街は城塞都市と呼ばれるほどであり、それ相応の広さがあった。さらに悪いことにその時間は乗り合い馬車も無かった。朝が早すぎたことが理由だ。
船着き場まで約数キール。その距離を俺たちはダッシュで駆け抜けたのだ。昨日のうちに街に入れていればこんなに急ぐこともなかったのだけど、入るのが今日になったことで本来乗るはずの船に乗り遅れている。
だから結果として直接王都に向かうことは出来なくなったのだ。
「……えっと、この船なら学園都市に向かえるのよね」
「はい。だいたい二週間ほどで学園都市に到着して、そのすぐ後に出る予定の王都行きに乗れば着けるそうです」
「学園都市ね……」
学園都市はその名の通り学校が中心の街だ。国立の騎士学校や魔法学校。この二つを合わせた基本的なことを学ぶ王立学院。文官に関することを学ぶ国立経済学院などいくつかの学校がまとまっている街なのだ。必然的に学生が多くなるため、街の建物の多くが寮だったりするらしい。他にも学校に付属されて研究所があったりしてなかなか面白いようだ。
俺たちは船に近くにある行き先表と自分たちが乗る船を照らし合わせながら船着き場を移動して行く。
幸い、なんの問題も無く船を見つけ乗り込むことが出来た。
ちなみに、船に乗るための旅券は船の中で販売している。俺は確認していないのだが、それなりには高い金額のようだ。
甲板で待っていると、肌寒いのか上着を羽織った二人が帰ってきた。
「乗組員の人に聞いたら学園都市までは風の状況にもよりますがだいたい二週間から三週間ほどだそうです。予定通りではあるのでこのまま行きましょう」
「自然な風だけで進んでると思いきや風を発生させる魔道具っぽいのが甲板に設置されていたのよ。さすがによくわからなかったけど魔力炉?ってのを搭載してる船のようねその魔力炉は見れなかったわ」
魔力炉ねぇ……聞いたことないけど響きからして魔力で動く炉なのかな?ロマンの香りがするがいずれ見ることもできるだろう。
おっと、そんなふうに話していたら船が動き出した。帆を見ると今は無風なのに確かに強く張っている。あの後ろに魔道具の送風機があるはずだから後で見ておこう。
こっからはそれなりに長い間船の上だからゆっくりはできるだろう。心配するべきことと言うならば……俺は生前から船に酔いやすいってことぐらいだな。
……そろそろ中に戻って横になろう。ちょっと体調が……ウップ……
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