魔銃使いとお嬢様

文月 

リロード

俺の最期?

 俺の名前は葉月大和。

 ごくごく一般的で20歳の大学生だ。もちろん彼女なんていた事ない。え?どうでもいい?……そうか。


 普段から数少ない仲のいい友人たちと一緒にいろんなところに遊びに行ったり、一人でちょっと海外に行ったりする、まさにごくごく一般的な大学生ライフを楽しんでいた。


 ただ、20歳にもなって未だにお酒はほとんど飲んだことは無い。

 いや、一度だけ飲んだことはあるがはっきり言ってあの味がダメ。お正月とかにお酒を飲んだりするけどあれがどうも苦手なんだ。だからよく飲むのは炭酸だな。昔っからよく飲んでるけど俺はあの矢のマークの炭酸が好きだ。あれは美味い。



 さて、そんな大学生ライフを謳歌している俺にも趣味はある。オープンなのはラノベとかのオタク趣味。異世界モノ大好きだ。もう一つの趣味と比べたらとっても僅差。

 そしてもう一つ。まだほとんど知り合いには言ったことの無い趣味がある。


 それはサバゲーだ。

 元々は新たな趣味程度で始めたFPSゲームにハマって色々と銃について調べていった結果、そういったものがあると知った。

 そして、ものは試しと参加してみたらまあ楽しくて楽しくて。

 ついには自分用の装備まで買ってしまうほどハマりこんでいた。


 だけどお金というのは当然使えば無くなる。当たり前だよな。俺は石油王じゃないから湧いてこない。

 だから俺は最近知り合いの店でバイトを始めた。ちなみにその知り合いもサバゲーで出会った人なんだよな。いい人だ。

 自分用の装備を買ったから今まで貯めてきたお年玉やらなんやらを使い切ってしまったからね。


 俺がバイトを始めた理由はもちろん新しい装備が欲しい、というのが一番だ。だけどそれはサバゲー用の服とかじゃない。サバゲーの醍醐味である銃だ。

 

 まあそんなわけでバイトをしていた。


 俺はバイトに行く時はいつも父さんから貰ったボロいバイクを直しながら通っている。これもサバゲー用の装備の為に自分の小遣いを切り詰めている結果だ。今の所持金的には新しいバイクを買えるくらいは貯まってるけどそろそろ装備を一新したいからまだボロいままだ。


 今思い返すとそれがダメだったのかもしれない。

 それのせいで俺は命を落としたのだから。




 その日は何故かいきなりバイト先の店長に呼び出されていた。

 せっかく大学が早く終わったから撮り溜めていたアニメを一気見とか後輩とゲームするつもりだったのにだ。

「葉月くんゴメン!いきなり呼び出して!」

「ほんとですよ。せっかく大学も早く終わって今日は家でのんびりと·········って考えてたんですから」

「マジでゴメンね。実は受注系の書類がどこかに行っちゃってさ·········探すのを手伝って欲しいんだよね」

「またですか?何やって……?はぁ。仕方ないですね、さっさと探しますよ」

「ありがとう葉月くん!じゃあこっちの方から───」



 なんてやり取りをしながら俺は作業をしていた。

 そうして作業が終わったのは夜の九時。

 結構長い時間やっていたと思う。

 だって店長いつも紙に書いてからPCに打ち込むんだもの。最初からPCでやればいいのに……

 結局、もう今から帰ったらアニメとか見る前に寝そうなくらい疲れていた。


「───じゃあ、お疲れ様でした……」


「うん!ほんとにありがとね!」


 そんな声に見送られながら店の外に出ると雪が降っていた。

 そういえば今日は雪が降ると朝のニュースで言っていた気がする。これじゃあ帰るにも時間かかるし、ゲームは後日かなあ……連絡は後でしようか。

 俺ははぁ。とため息をつきながらエンジンをかけた。


 もう時間も遅いからと少し焦っていたのだと思う。

 俺は速度をいつもよりも出しながら家に向けてバイクを走らせていた。


 バイト先からは家までだいたい三、四十分といったところだ。店長の店って街の外れ、郊外にポツンとあるからな。


 普段ならばいつもは曲がらない所を今日は急ぐために曲がった。

 その道は昼間ならちゃんと近道として機能するが、夜は地元の人も通らないほど不気味な道だった。


「やっべー、やっぱ通るんじゃなかったかな·········」


 俺も数度しか通ったことの無い道だからか、その道に入って数分で後悔し始めていた。

 しかも少し雪が積もり始めていて、動きにくいし滑る。

 しょうがないからバイクを降りて押して歩くしかないだろう。


 一時間くらい苦労しながらもようやっとその道を抜けた。

 そこは暗いから分かりにくいが普段から通っている通りに近い場所だった。

 この天気で人通りは少ないと言ってもさすがに車の通りはあるようで雪が積もってはいなかったから切っていたエンジンをもう一度つけた。


 そしてバイクに乗り、ゆっくりと動き出したその時だった。


 俺が横から来た猛スピードで横滑りする車とぶつかったのは。


「えっ」


 ほんの一言言う時間だけ与えられて俺はその車に撥ねられた。傍から見ればまるでピンボールの玉のように弾き飛ばされたと思う。


 俺のバイクは古いせいか、エンジンや車体が重い。そのせいで俺は咄嗟に逃げることが出来なかった。




 さて、ここからは彼が知るはずの無い話。

 彼がぶつかった車は飲酒運転をしていて、積もった雪でスリップをした。彼は即死。遺族?さあねえ。

 なぜなら彼は────




「ここはどこだ?」



 ────何も無い真っ白な空間にいるからだ。

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