第41話ようじょ、再会す





『 TO 暗黒魔導師シュヴァルツカッツ



 我、復活の時、来たれり。七曜金ノ刻、黄昏、約束の地へ帰る。


 今こそ契約を果たす時。汝、いずれの儀式も無くば、参上されたし。


 合言葉は我【ナイトオブファイヤー】


 汝、【マイキングイズユー】


 過の時を司る塔の下で、待つ。


 とっても会いたい! サラマンダ―も一緒! にゅふー!


  from 深淵の獣神:黒龍ダークロン




 そんな奇怪な文章が、寧子のスマホへ飛び込んできた。

 寧子は迷わずスケジュールを確認し、問題ないことを判断する。

そうしてすぐさま旅支度を済ませ、指定された時に従い、電車へ飛び乗るのだった。


 向かう先は寧子の地元。

 寧子は実家へ着くなり荷物を放り投げ、久々の帰郷を喜ぶ父親を振り切った。そして約束された場所”時の塔”――駅前の時計台へ急ぐ。


 そして寧子は見つけた。

 時の塔の下に佇む、フリフリな黒いドレスのような恰好をした、おかっぱ頭の、寧子と同じく“ようじょな見た目の成人女性”を!


「スーちゃん!」


 感極まった寧子は、おかっぱ頭の女の子へ叫ぶ。


「ねい……にゅ!」


 一瞬おかっぱ頭は表情を緩めるも、すぐさま鋭い視線を投げかけてきた。


「スーちゃん、ですよね?」

「合言葉! ナイトオブファイヤー!」

「あ、あ、えっと……まいきんぐいずゆー?」

「にゅ! 久しぶり、シュヴァルツカッツ!」


 そしてすかさずハイタッチ。

 中学を卒業してから五年。だけど寧子とおかっぱ頭のコンビネーションはいまでも健在だった。


 彼女の名前は【犬塚(いぬずか)墨子(すみこ)】――通称”スーちゃん”

しかしその名は世を忍ぶ仮の名であり、真名まなを【深淵の獣神:黒龍ダークロン】である――と、いう設定で寧子と共に中学時代を過ごした無二の親友の一人である。


 と再会を喜び寧子とスーの前へ現れた、たわわでポインと揺れるメロンが二つ。豊満な胸のせいで、Tシャツにプリントされている”トカゲ”のイラストが、まるで潰れたかのように横に伸びている。

 スーちゃんは幾ら歳を取っても決して自分には縁の無さそうなたわわな胸を見上げた。


「ナイトオブファイヤー!」

「んー……? あっ! マイキングイズユー!」

「にゅ! 久しぶり、サラマンダ―!」

「アンちゃん、久しぶりなのです!」


 寧子の弾むように言葉に、身長が高く、立派な胸を携えた彼女は柔らかく微笑んだ。

 彼女の名前は【ほむら 杏奈あんな】――通称そのまんまな“アンちゃん”

 しかしその名は精霊の巫女という立場隠すための仮の名であり、真名まなを“炎の絶対支配者:サラマンダ―”――という設定で、中学時代を共に過ごした無二の親友の一人である。


 この寧子を含めた三人娘は、つまり、リアル中二だったころの同級生で、いわゆる黒歴史という絆で深くつながった間柄なのである。


 三人はかつて約束した――大人になったら一緒にお酒を飲もうと!

そして早生まれでようやく20歳になり、更にたまたま南米大陸から帰国した“スーちゃん”のタイミングに合わせて集まった次第だった。

これは一体どこの仮面ラ○ダー劇場版(昭和)かっ!?


「暗黒会議! 五年ぶり! にゅふー」


 スーちゃんは大好きな寧子や杏奈に会えたのが相当嬉しいのか鼻息が荒い。


「みんな変わらないですね……や、アンちゃん、また胸大きくなったですか?」

「んー……たぶん。辛い」


 杏奈は肩を辛そうにモミモミ。ようじょな寧子やスーちゃんには一生縁のない悩みに思えて仕方がなかった。


「で、どこにする? ネコとスーちゃん何飲みたい?」


 地元で短大生をしている杏奈が、気を利かせて聞いてきた。


「ワインが飲めたら嬉しいですねぇ」

「日本酒! 日本酒! にゅふー!」

「わたしはとりあえずビール……だったら!」


 杏奈はチェーン系居酒屋の前で立ち止まった。


「ここ結構いろいろある。最近の居酒屋は凄い」

「じゃここできまりですねぇ~」

「日本酒! 日本酒! にゅふー!」


 かくして寧子達は一件目として、“トカゲのシルエット”が目立つ居酒屋へ踏み込んだのだった。


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