第154話

 飼い主を主張する人達を引き連れて、冒険者ギルドの受付嬢がやって来た。でも、あれ? いち、にー、さん……四人?


「お待たせしましたアユザワさん」

「四人ですか? 確か九人じゃあ……」

「他の方はその……辞退されました」


 という事は、そいつ等全員転売目的だったか。まあ、聴取の手間が省けたからいいか。


「えっと、私が依頼主のカナ=アユザワです」


 自己紹介をしつつ、衛兵詰所での聴取をする事に臆する事なくやって来た人達を見渡す。男が二人に女が一人。そして、幼女が一人。


「あなた方にはこれから、聴取を行います。二、三質問をするだけですので、正直にお答え下さい。飼い主さんと判断した方にお預かりしているペットをお返し致します。何かご質問は……?」


 私の問い掛けに、各々が首を横に振る。


「分かりました。ではあなたから」


 一番左の若い、二十五、六の男の人を指差して、一緒に詰所内の取調室に入った。




「まずはお名前をお聞きして宜しいですか?」

「ボクの名前はカール=ヤッツオ。えっと、二十五歳です」


 チーン。呼び出しベルが鳴った。予想通りにちゃんと動いてくれた様だ。


「え……? 何ですかコレ?」

「ウソを見抜く魔導具です。とあるコレクターのお方からお借りしました。コレが鳴ったという事は、あなたは今ウソを吐いた。という事ですね」

「う……は、はい。年齢を……」

「実際はお幾つなんですか?」

「に、二十八です」


 チーン。


「……」

「本当は……?」

「わ、分かりました。三十五ですっ」


 呼び出しベルが鳴らない。って事は本当か……ってか三十五?! み、見えねぇぇっ。


「で、では。単刀直入にお聞きします」


 テーブルの上に受付嬢が描いた似顔絵を出した。


「この獣は、あなたのペットですか?」

「は、はい。そうです」


 チーン。……ウソつき。


「お疲れ様でした。もう帰られて結構です」

「ち、ちょっと待って下さいっ」


 結果が不満だったのだろう。十もサバを読んでいた若作りの中年男性が食い下がる。


「何ですか? 魔導具が鳴ったという事は、あなたはウソを吐いたって事ですけど?」

ウソを見抜く魔道具こんなのが本当に信用できるのですか?」

「勿論ですよ。私はこの装置を心底信用していますし、あなたも身を以って知ったでしょう?」

「クッ。だ、第一、あなたの質問の仕方が悪いっ。ボクはコイツをペットでは無く、家族の様に思っているのですからっ」


 チーン。


「……」

「もういいですよ。帰って」


 若作りの中年男性は、ガックリと肩を落として取調室から退出して行った。はい、次っ。

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