第129話
冒険者ギルドには多くの冒険者達がたむろしていた。談笑している者、売店で酒を酌み交わす者。普通に食事をしている者や女性冒険者をナンパしているヤツも居た。そして、貼り出された依頼書を眺めている者。
ここならば、世界を旅している数多の冒険者達の目に触れる。もしかしたら、飼い主が捜索の依頼をしているかもしれない。そんな期待を寄せつつ、依頼書が貼り出されている掲示板へと向かった。
掲示板には多くの張り紙が貼られていた。魔物の討伐依頼、薬草等の採集依頼。そして、失せ物の探索依頼。それぞれがカテゴリ別に貼られていて、分かりやすくなっている。
私は失せ物探索の前に立ち、このコの飼い主が依頼を出していないか探して回る。探索依頼にも様々なモノがあった。落とした指輪の探索、落とした財布の探査……なんか落し物の依頼ばかりだな。ん? これは……?
「ええっとなになに……『私の前から突然消えた彼氏を探して下さい』?」
……それって捨てられたんでしょうが。こっちはどうだろうか……?
「『お腹の子の父親を探して下さい』?」
知るかそんなのっ自分の心の中を探せっ!
「ハァ、何なのよ。この依頼の数々は……おっ」
依頼書に書かれた『ネコ』の字に、私は思わず飛びついた。
「『この絵の中にネコが一匹隠れています。探して下さい』」
…………ソレ、ここに貼るような事か?
失せ物探査の掲示板には該当する様な依頼……というより、ロクな依頼しかなかった。念の為に別な掲示板も見たが、『
「んー、無いかぁ……ん? なにこれ?」
それは、採集依頼の最奥に隠れる様に貼られていた。依頼書のあちこちには鋲で穴が開いていて紙自体も黄ばんでいる事から、長い間ここに貼られていたらしい。依頼者名等はほぼ消えてしまっていて、辛うじて分かるのは『ユキメ草』くらいだ。何だろ、ユキメ草って。
「ん? 何だ嬢ちゃん。それに興味があるのか?」
冒険者の一人が、依頼用紙を捲り上げて物珍しげに見ていた私に声を掛けて来た。
「これが何か知っているんですか?」
「まあ、な。だけど、タダじゃ教えられねぇなぁ……。どうだろう? 俺の部屋で聞きたくはないか?」
「いえ、結構です」
「即断かよ!」
これが真顔だったのなら付いて行ってしまったかもしれないが、ニタニタしながら視線を縦断させては別目的で近付いたとしか見えませんって。
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