第65話
相手はかなりの強敵だった。ドアを開けると同時に感じた異様な気配は、むせ返る様な塊を放って私に攻撃を仕掛けて来た。私はその攻撃を
「ハア……。明日からどうしよう……」
大声を出してしまったが為に、
『逃げ出そうか』とも考えたが、首に下がる魔法の
「借金返済まで一年……か」
この強制羞恥プレイ。耐えられるのか? 私。
どうしたものかと考えていると、トントン。とドアを叩く音。それに応えてドアを開けると、ソコにはリリーカさんが立っていた。
「こんにちは、お姉様。お久しゅう……何か臭いませんか……?」
う……
「ん、んまあちょっと訳アリで……」
「そうなのですか? お姉様、魔法を使わせて貰っても宜しいですか?」
「え……? ええ、良いわよ」
一体何をするつもりなんだろう……?
「では。木の精霊ドライアース。契約に基づき我の元に来たれ」
構えた杖の先にポウッと淡い緑色の光が灯る。その光が弾けると、中から小さな女の子が現れた。上半身は裸で脚は木の根の様になっていて、頭には髪の毛の代わりに木の枝が生えて葉が生い茂る。やだ、ちっちゃくて可愛いっ。
「汝が清浄の力以て、不浄なる部屋を浄化せよ」
ちっちゃな女の子がコクリ。と頷くと、クルクル。と室内を飛び回る。その度に室内に残っていたアノ香りが薄れてゆき、彼女が役目を終えて消える頃には、雄大な自然の中に居る様な錯覚を覚えた。
「終わりましたわ」
「すごーい」
パチパチ。と手を叩き賞賛する。『そんな事ない』と言って照れた姿がカワイイ。思わず抱き締めたくなる程だ。
「この数日、お姿をお見掛けしませんでしたが、何方かへお出掛けになられていたのですか?」
「ううん。ずっと仕事してたの」
「仕事。ですか?」
「ええ、港の『アルカイック』ってギルドで住み込みで働いているのよ。今日はたまたま部屋の風通しに戻って来たの」
「あ、そうなんですね」
ホッ。なんとか誤魔化せた。
「リリーカさんはどうだった? 晩餐会」
豊穣祭開催三日目に催されたと思しき晩餐会。豪華な食事が並び、優雅な音楽と共に参加者が華麗に舞い踊る。そんなイメージを持っていた。
「その事でお姉様にお願いがありますの」
神様に祈る様な仕草で胸の前で手を合わせ、目を潤ませながら上目遣いで懇願するリリーカさんに、それは反則だよう。と思っていた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます