k-196

 ハインリッヒの手勢を撃退した俺たちは、ランカスタ王国とキール王国の国境に着いた。


 こちらについてくれたチンピラたち(親分がジョニー、ジョニーと七人と悪魔というギャングらしい)とは、途中で別れた。国境を渡る身分がなかったためだ。


 彼らには助っ人のお礼として金貨100枚を渡した。彼らは情勢が落ち着いたらレスタに戻ると言っていた。



 キール王国の門番はなんというか中華風と和風の間みたいな格好をしていた。


 国境を通過する際、近くで観光に良い町を門番から聞き出した。ランカスタ語ですらなかったので、もちろんジェスチャーと筆記で。



「ふう、逃げ切った……。流石に国境跨いでは追ってこれないだろう。」



 門を通過したところで俺たちは脱力した。


 いかにハインリッヒが貴族といえども、他国の領地に軍隊で侵入すればそれは宣戦布告に等しい行為。俺から得られる利益とリスクの天秤が釣り合っていないからな。


 なので、もう大丈夫だろう。



 それから馬車で半日ほど進むと、門番が自慢げに話していた「温泉の町ホワイヨ」に到着したのだった。




 温泉の町ホワイヨは草津温泉に中華風の要素を足したような町だった。時刻は既に夕食時。



「これはゆっくりするのに良さそうだ。ハインリッヒももう追ってこないだろうし、しばらくここでゆっくりしよう」



 俺がユリナさんとドニーさんにそう提案すると、二人は賛成してくれた。


 門衛おすすめの温泉宿、「海猫亭」の空き部屋を2つ確保すると早速温泉へゴー。



 男女できちんとお風呂場が分かれていて、100%源泉掛け流しの露天風呂まであった。泉質は硫黄系だ。



「いいねえ」



 これは癒される。


 露天風呂は混浴、ペットも入浴可だったので、タオルを巻いたユリナさん、アッシュと一緒に堪能したよ。


 もちろん色っぽいユリナさんを他の男に見られるわけにはいかないので、人は遠ざけた上で。



 お風呂から上がった俺たちは部屋で夜飯を食べることにした。俺とユリナさんの若干広い部屋にドニーさんも来てもらった。


 部屋はこれまた和風の畳と中華っぽい装飾が施された内装。なかなかに落ち着く雰囲気だ。



 そして町は海が近く、この温泉宿では海の魚介類が名物らしい。



 ということでハインリッヒから逃げ切った記念で一番高いコース料理を注文すると、刺身、汁物、煮物、焼き物が紹興酒っぽいお酒と一緒にわんさか出てきた。


 刺身と一緒に出てきたのは魚醤で、刺身に会うように塩辛さがきちんと整えられていた。薬味でついてきた生姜おろしっぽいものもいける。



 最高。その一言に尽きるな。



「ん? それ光ってますよ?」



 魚料理と酒に舌鼓を打っていると、ドニーさんが持っていたジュノから渡されたという水晶のような魔道具が、光っているのに気がついた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 視点がケイゴたちのところに戻りまして、ケイゴ一行は隣国の温泉街に辿り着きました。馬車で旅して温泉につかって刺身食っちゃって。スローライフな感じ、憧れます。


 このあたりも新しく書き下ろしたエピソードになっております。


(作者のモチベになりますので本作が気に入ったら、☆、♡、お気に入り登録、応援コメントよろしくお願いします🐉 書籍、コミック、ニコニコ漫画での連載も宜しくです🐕)

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