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 川岸一面に香ばしいあの匂いが立ち込めていた。



 何を隠そう、俺が東京で通い詰めていた高級うなぎ専門店のあの独特のタレのいい匂いである。


 タレの作り方は、まず集落で仕入れた醤油をベースに、みりんの代わりにセリュー酒(清酒っぽい酒)に砂糖を加えたものを混ぜて煮込む。


 それからうなぎの頭と肝……、の代わりにサーペントの頭の部分と肝(毒がないことを確認した上で)を網で焼いたものをタレに投入してさらに弱火で20分ほど煮込めばウナギダレの完成だ。


 なぜこんなことを思いついたのかというと、あのウネウネとしたフォルム。そして軽く切り身を炙って食べてみた時の独特の食感がなんともウナギっぽかったのだ。


 ちょうど集落で醤油が手に入ったこともあり、ここは是非あの高級うなぎ店とは行かないまでも、近い味を再現したいと考えたのである。



 さらにタイラントで仕入れた焼き台と木炭もある。むしろこの時のために神様が俺と焼き台を巡りあわせてくれたとしか思えない。


 もちろん幌の中で薪ストーブの上で調理できないこともないが、ここはやはり木炭の火で焼き台の金網の上でじっくりタレ焼きにするのが通というものだろう。


 俺は木炭の火で調理用のヘラでサーペントの切り身にウナギダレを塗っては焼き、塗っては焼きを繰り返した。



 その結果あたり一面に香ばしい匂いが立ち込めるということになってしまった。




 焼き台の周りには俺、ユリナさん、アッシュ、そしてヨダレを垂らしたブルーウルフが10頭以上いる。


 匂いは完全にうなぎ専門店の換気扇の前。


 全員目が完全にサーペント……、いやウナギの蒲焼に釘付けだ。



 キツネ色に輝くウナギの蒲焼を皿に盛り付け、俺は試しにそっと口に運ぶ。もちろん傍には生ビールではなくキンキンに冷えたエール。



 パク…… ホロホロ…… 


 ドドーン!!



 背後に雷光が走り、俺は思わずエールを一気に飲み干したのだった。



「幸せすぎる……」



 俺は思わず涙した。



 そんな俺の様子に待ちきれなくなったユリナさんも一口。どどーん! そのリアクション最高ですね!



「アッシュ、ブルーウルフたちもお食べ」



 俺はお利口に待てをしていたアッシュとブルーウルフたちのお皿にもウナギの蒲焼を分けてあげた。



 みんな無我夢中でウナギの蒲焼を食べていたよ。



 それから俺は、金網を使い、ウナギの蒲焼を焼きまくった。ブルーウルフたちはたいそう気に入ったようで、何度も何度もおかわりをした。



「俺たちを命懸けで守ってくれてるんだ。いっぱいお食べ」



 俺はコカトリスの一件だけじゃなく、他にも人知れず守ってくれているブルーウルフたちをウナギ料理で労ったのだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ということでウニ料理に引き続き、なんとあの苦しめられたサーペントがウナギの蒲焼になっちゃいました!!

 作者は実はウナギの専門店は東京で一度だけ(スカイツリーの中にあるめっちゃお高いところ)しか行ったことがありません。

 ウニは利尻や積丹で何度も新鮮で美味いの食べているのでリアルな表現ができたはずなのですが、ウナギはその時の記憶とググった知識でしか語れないのが歯痒いです。

 やっぱり小説を書くには、実際に食べてその感動を書くのが一番伝わるかなと思ってます!!

 次回多分ひつまぶし食べるかも!! (書籍版にはないカクヨム版オンリーということで書籍版に加筆したり削ったりしたいと思います!!)


(作者のモチベになりますので本作が気に入ったら、☆、♡、お気に入り登録、応援コメントよろしくお願いします🐉 書籍、コミック、ニコニコ漫画での連載も宜しくです🐕)

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