k-126

 その日の夜、結局俺はユリナさんのお店に来ていた。


 結局行くんかい! と突っ込んでくれても構わない。言い訳のしようもないからな。


 ユリナさんと話していると、とても落ち着く。お酒もここでしか飲めないラインナップがある。


 来ない理由が無い。


 俺は、席に座る前に、お土産のハーブ鶏の燻製卵を彼女に手渡した。


 途中マルゴの様子を見てきたが、修羅場は何とか切り抜けられたようだった。よかった。


 アッシュはマルゴの店に預けてきた。


 蒸留酒はストレートか水割りの他ロックもできた。


 ロックに使う氷は恐らく魔法か何かで作ったものだと思われる。


 冷凍庫などこの世界にあるとは思えないし、この近辺に氷が自然に採取できる場所もない。


 またユリナさんは、お土産にもってきた燻製卵を切り分けてくれて、酒の肴にしてくれた。


 それを口にしたユリナさんが、驚いた顔をしていた。


 ユリナさんは見た目は若いが、精神年齢的な意味で大人の女性だ。俺が求めていることを察してくれた。


 俺は心に壁を作るタイプだ。


 心を許した相手以外とは肉体関係など持ちたくない、と考えてしまう人間だ。


 不用意に近づいて、相手を傷つけ、それを見た自分が傷つくという経験を嫌というほどしてきた。


 大人になればなるほど、無防備な恋愛はできなくなるものだと思う。


 ユリナさんは、そんな俺の心の内を一発で見抜いたのだろう。


 一生懸命、俺を会話とお酒で楽しませてくれようとしてくれる。


 いつも思うことだが、本当にこの手のことで女には勝てる気がしない。



 俺も彼女のことが知りたくて、色々と彼女の話を聞いた。


 彼女の言葉を通じて、この町のこと、この世界のことに興味を持つきっかけとなった。


 今飲んでいる蒸留酒は、どこでどうやって作っているのか。この世界には他にも町はあるのか。



 ――俺は、目の前の景色が、鮮やかに彩られていく感覚を覚えた。



 なぜ月が蒼いのかについても、質問してみた。


 しかし彼女にとっては、月は蒼いという認識でしかなかった。


 それが当たり前なのだろう。それらの情報は全て、紙にメモしていった。


 彼女のおかげで、まるで興味の無かったボンヤリとしたこの世界が、急にカラフルに色づいていくように感じた。



 彼女からプレゼント交換の申し出をされた。


 俺は、「君のことが知りたいから、君の一番好きなものをください」と答えた。


 逆に俺も「自分の一番好きなものをプレゼントします」と彼女に伝えた。次来るまでに、プレゼントを用意しておかないといけないな。



 ――いつの間にか彼女との時間は俺にとって、とても心地の良いものになっていた。


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 みなさんこんにちは! ここまでお読み頂きありがとうございます🐔


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