護りの鏡の意思を継ぐ者
7話—1 八咫の名が背負いし定め
三人の魔法少女達が天空を舞う中、その背後よりついにそれは現れた。
刹那——大気を焦がす
当然それは
「お姉ちゃん、レゾンはん……武蔵の主砲が来ますえ!射線に気を付けて!」
「確認したよっ!レゾンちゃんっ!」
「対応している!武蔵の艦砲射撃ならば魔界の決戦で把握済み——射線のレンジ外から突撃を敢行する!」
重力子の砲火と同時に絶対障壁へと激突した。
が……地球に降り立った際の
「……ベル!流石にこの連戦に近い状況——加えてこの地球の
『あら、泣き言ですか?レゾンらしくもない。……とは言え、私もここまで力の制限を受けるとは思いませんでした。ここは魔界での戦闘時の様な、安直な思考は慎んだ方がよさそうですね。』
「その通りだ、ベル!そうと決まれば突撃に要する
しかしかの
同時に王女へ……〈
「スーパーパートナーの力だね、レゾンちゃん!ではローディ君、私の力をレゾンちゃんと同調させるよ!準備はいいっ!?」
『もちろんだよテセラ!いつでもっ!』
魔王からの言葉を受けた金色の王女は、その意図するところを素早く察知——
次いでその起点となる、こちらも
「〈
『重なりし我らは、宇宙の摂理を体現する者なり……〈
通常の魔法術式行使とは異なる、二人の同調が基盤となる形態の魔法——惹かれ合う力発動はキーこそ金色の王女によるものであるが、術式からの相転移変換そのものは
魔界世界であればその依存度合いも少ない所だが、ここは光の満ちる世界——大幅に
『レゾン……〈
「皆まで言うなよ、ベル!私がテセラとの同調を崩すなどと思っているのか!?」
『ああ……まあ、大体予想はしてましたけどね(汗)そんなレゾンが眩しく見え——』
「ちょっとベルさん!?そう言うの、今はダメですっ!後にして下さいっ!」
「……なんやえろう余裕ありますな、レゾンはんにベルはん(汗)。お姉ちゃんも突っ込み待った無しや。」
術式展開と同時に、王女と魔王の
金色の王女の言う様に、百合を迸らせる軽口……場にそぐわぬ空気が流れる。
だがそこには反撃するも未だ反応を見せぬ敵対者……魔法少女達が
それを裏付ける様な赤き魔王の視線は、百合百合な軽口を飛ばしながらも鋭く壱番艦艦橋を睨め付けている。
悲しき定めに舞う超戦艦を用いた凶行……魔界で共に戦場を駆け巡り、弐番艦に宿る運命と魂の気高さを知った魔王にとって——
その蛮行は余りにも度し難き行為であったのだ。
そして——
彼女にとって理知の及ばぬ魔界勢なる勢力が、宿す願いに足止めを掛けていたから。
「魔界勢だと?赤き魔王だとっ!?なんだこの状況は……私が望んだのはこの様な事態では無い!この様な者が私の邪魔をするなど——これでは主へこの肉体を返す事も叶わなくなるではないかっ!!」
それは即ち——深淵の浸蝕——
霊的に高位な生命ほど、魂が堕落した際の深淵浸蝕速度が増すと言われ——
その中でも最も高位である天津神の神霊ツクヨミノミコトは……正に深淵にとって都合のいい贄となり得た。
神霊が深淵に堕ちる瞬間を待ち望む者が……この地には存在している。
あのカガワ沿岸の造船地帯に居を構える、深淵の手足となって動く人ならざる者である。
「どうやら、己を維持する事も叶わなくなって来たみたいだな。まあ……まともな思考があれば、その程度の事を神霊に属する者が気取るのは簡単だったろうが——」
「いいぜ?そのまま墜ちて行け。俺はそれをただ利用させて貰うだけだからな……哀れなる鏡の化身さんよ。」
造船地帯の門型クレーン上で独りごちる深淵の尖兵。
その背後には、只ならぬほどに増大した深淵の気配が渦を巻いて立ち込める。
いつでもその深淵の刃を生命に向けられると言わんばかりに——
∽∽∽∽∽∽
未だに彼の真意は定かでは無い。
けれどウチは、悲しみに暮れる暇など無かったのです。
現状ウチを始めとする光に属する戦力は、術式にて抑え込まれたまま。
おまけに眼前——武蔵艦橋の宙空モニターに映るテセラちゃんにレゾンちゃん……そして
そして隣り合う二人の友人。
馴染んだ草薙の裏門当主である
視界に映る二人は……歯噛みし——力があるにも関わらず、それが封じられて手も足も出せない今を悔やむ様に立ち尽くします。
「……サクヤちゃん——このまま黙ってるなんて、ウチは耐えられんで。」
「
心の中で今まで揺らめいていた決意が……友人達の覚悟に感化され——ウチはようやく決断します。
この内に眠る
「
ウチが成さんとする事を知り得る宗家身内である
純粋な確認を取るとの面持ちでウチを見やります。
「守護宗家に属するウチの前で、
「……うん、もう決断したんなら——私から言う事は何も無いよ。けれど一つ……無理はしない様にね?」
「分かっとるで☆ありがとな、
頷き合うウチらを見たアーエルちゃんも、
「サクヤちゃん、行くで!ウチの力は何も光に属する物ばかりやない……それこそが
「三宗家でも、陰陽双方を継ぐウチら八咫家にのみ許された禁忌——陰に属する感情を司る秘奥義の出番や!」
「御意にございますっしゅ!陰の理にて放つならば、現状我らの戦力を封じる
決意を口にした私はそのまま武蔵艦橋より——
飛び出たその足で甲板上へと躍り出ます。
『
響く通信の先で、守護宗家御用達の
その彼へ、ウチの霊導機を通して出でる宙空モニター越しに首肯を返すと……武蔵甲板の遥か前方――大和を望む位置へと陣取ります。
「人の陰陽とは感情も含まれる事象であり……ウチはその陰なる力——悲しみや苦しみを力に変える術を持っとる!これより——」
「その陰に属する最強の力である憤怒……それを我が友サクヤちゃんの霊力を介して解き放つでっ!」
ウチの背後……少し離れた場所に待機したサクヤちゃんとアイコンタクト。
そしてウチは——ウチの持つ
「サクヤちゃん、
「ウチの歌を聞けやーーーーーっっ!!」
カガワの都……蒼碧の天空へ響くのは歌声。
それもただ想いを
ウチの咆哮と共に、ハイスピードヘビィメタルの牙が……大気を熱く激しく打ち震わせた。
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