6話—4 武蔵抜錨!カガワの都に舞う超戦艦の砲火

御津迦みつか君とはその面識の殆どが、宗家医療施設でのモノなんや。彼は生まれた時から体が弱あてな……ウチが物心ついた頃には、病棟のベッドで彼が笑っとった。」


「うん……その辺はウチも聞き及んどりますえ。」


 大ブリーフィングルームでの会議から暫くし——御津迦みつか君の人となりを知りたいと申し出た友人へ……落ち着いた焔ノ命ほのめちゃんが語り始めます。

 何にしても、敵対する事が決定してしまった様な状況——そこで彼へ精神的な揺さぶりがかけられればとの、戦略的思考から来る提案がお姉ちゃんとレゾンはんから提示されたのです。


「そう言えばさ……御津迦みつか?だよな。そいつ焔ノ命ほのめとは兄妹になんのか?」


「ああ、うん……せやね。ウチらの母様は八咫 焔やた ほむら言うんや。そして御津迦みつか君とウチは二卵性双生児——つまりは双子やね。さらには——」


八咫やた家には不思議な伝承があってな……。〈力を継ぐべき者、因果を継ぎて双子として生を受けん〉言う習い通り——総じて、一卵性や二卵性の双子が生まれ易いって伝わっとんねん。」


「現に母様も一卵性双生児やった言う事やから、伝承や言うて割り切れん所や。」


 元々悲劇から生還した影響もあり、家族と言う概念に乏しいアーエルちゃん——彼女もまた最近では、人と人との関わり合いに対する前向きな情報収集が目を引きます。

 宗家内事情は特段に異端であるも、アーエルちゃんにはもってこいの情報源でもありました。


 さらに聞いた思考から新たな情報の推測を導くレゾンはんは——


「守護宗家の陰陽紋は表裏の意を含んでいる……だったな、確か。ならば八咫やた家が鏡を守護する御家と言うなら、因果としてその表裏を守護する者として双子が生まれ易くなる——」


「そう言った所か?焔ノ命ほのめ。」


「まさに、ご名答——やね、レゾンちゃん。」


 図らずとも守護宗家の厄介になる内……そもそもの向上心から来る情報収集能力に長けたレゾンはんは、いとも容易く守護宗家が関する陰陽の理の本懐に辿りつき――宗家身内でも感嘆を覚える解を焔ノ命ほのめちゃんへと提示します。

 だてに魔王様は名乗ってはいないと驚嘆も已む無しです。


「でもそれだけの要因では、彼に揺さぶりを掛ける決定打には欠けるね。やっぱり出たとこ勝負で、直接彼へ……事に及んだ理由を問い質すしかないか。」


「だな……。これだけじゃどうにも――」


 桜花おうかちゃんも口にした様に、今回の事態はあまりに急すぎて全容が把握出来ず――且つ首謀者の意図すら掴めぬ状況。

 まさに袋小路ではありました。


 事態が事態……対応が後手に回る事を避けたくとも、今ある情報では埒も明かぬと皆で思考錯誤に耽る中——


 動いたのは——敵対者である御津迦みつか君側だったのです。


『お嬢様方!緊急通達です!大和の反応が今、シグナルで確認されました!』


「……っ!?緋暮ひぐれはん、それほんまおすか!?その反応は何処へ——」


 突如として大ブリーフィングルームへ響く通信。

 通信は今まさに大和捜索のため武蔵艦橋に缶詰めだった、魔界勢の緋暮ひぐれはんからの物。

 鬼気迫る声が逼迫した状況を知らせるには十分であり——


『大和の反応は、武蔵より直線距離で50km先……カガワの都造船地帯岸壁と確認!すでに移動を開始した模様——』


「進行方向から算出した目的地は……と推定されます!」


「そんな——封絶鏡やてっ!?」


 響く焔ノ命ほのめちゃんの叫びと重なる様に、頷き合うウチと友人達……そして支える方達一行はその足を各々が担うべき場所へと向け——


「お姉ちゃんにレゾンはん!ウチらは先行して足止めを!」


「うん!行こう、若菜わかなちゃん!」


「言わずもがなだ、若菜わかな!行くぞっ!」


「では——私達の出撃に合わせ、武蔵抜錨!大和を彼より……八咫 御津迦やた みつか君より奪還します!!」


 同時にお姉ちゃんの号令にて、地球最大戦力——その弐番艦の動力機関へ火が入れられます。

 望まぬ因果の戦いへ……ウチ達と共に舞い上がる様に——



∽∽∽∽∽∽



「そうか……あい分かった、こちらでも臨時に対応を取る。——聖眞ひじりまだ。カガワの都を含めた四国四都へ、緊急戒厳令発令。そうだ……四都全てだ。」


 世紀の会談が、緊急事態によりからぶった時の総理清宮

 加えてまさに日本どころか地球存亡に関わる事態発生に、その心を痛めつつ——国家規模の作戦指令を通達した。


 復興中とは言え数多の崩壊を乗り越えて来た現在の日本は、もはやかつての国家憲法がまともに機能しない現状を多分に孕み——且つ地球規模の厄災に於ける重要作戦決定如何いかんが、今や日本へと回って来ていた。


 その決定を一手に引き受けていたのは、まさに聖眞 清宮ひじりま せいくうその人である。


「草薙君……宗家側からも八十八の社へ繋がる同時複列量子通信展開を。四国を守りし霊縛結界起動を通達頼めるか?」


「すでに通達は行っております——が、戦闘の余波がどれだけ防げるかは想像できません。」


「……承知の上だ。それでも国家として、国が焼かれる様な事態を黙って見過ごす訳にはいかん。我が国はもう……たくさんだからな。」


「……同感です。では私は一先ず、この新堺市からの臨時対応に当たりますので——総理はすぐに東都心トウキョウへの帰路を。彼女達との会合はまたいずれ……。」


「すまぬな、任せる……三神守護宗家を纏めし英雄よ。」


 眉根は顰めたまま——だが、来る最悪の事態を避けるべく……動くべき時に動かねばと腰を上げる総理。

 その彼が口にした宗家を纏める者との言葉へ「買いかぶりです。」との視線を送り、その場を後にする外交の天才炎羅


 足早に要人応接室を後にした彼は、携帯端末越しに今少女達と共にあるSP陣へも通信を飛ばし――


「こちら炎羅えんらあぎと……国塚くにつか円城寺えんじょうじはそこにいるな?ここからが我ら宗家の正念場だ。零にはこちらから伝えておく――魔法少女達のサポートを任せた。」


「守るぞ日本を――そして世界をっ!」


 すでに魔法少女達の後ろ盾は、宇宙と地球を股にかける様に……数多の国家クラスが支えると言う次元に達していた。


 それはひとえに……確実に世界滅亡の危機が、目前へと迫っている事実に他ならなかったのだ。



∽∽∽∽∽∽



「やはりこれ以上の降下が叶わぬか……。だが——」


 造船企業区画沿岸より、姿隠しの奥義八咫天鏡を取り払い……奪われし壱番艦大和が天空を舞う。

 が——そこからさしたる距離を置かぬ場所に至った時、この島国でも独立した四都を要する大地を囲む光が放たれた。


 それは言うに及ばず、三神守護宗家が神仏融合の摂理の元……四国を囲む様に巡る八十八箇所の社へ放った伝令——

 この四都の全域を囲む巨大なる霊縛結界が、鏡の化身ツクヨミノミコト奪われし壱番艦大和の行く手を阻んでいた。


「深淵の力は十分とは言えぬ。しかし主の体はすでに限界……ここは無理を賭してでも、あの封絶鏡を抜け黄泉比良坂ヨモツヒラサカへと——」


 鏡の化身の視界に……そして思考には、仏門に於けるあの世しか映らない。

 天津神の伝承に於ける、根の国と同位相のその地にて……己の主への贖罪を果たす——ただその事だけしか映らない……。


「……っ!?邪魔者が——」


 その化身が奪われし壱番艦大和より、強行突破の砲火を放たんと艦前方の主砲……46cm粒子可変三連装砲門へと、統一場クインティア・フィールドより抽出されし重力子グラビトンを充填した刹那——

 彼女が一人立つ艦橋へ緊急警報アラート——奪われしの壱番艦大和へ迫る音速の影を捉え鳴り響いた。


「私の……邪魔を——するなーーーーっっ!!」


 すでに猶予無き鏡の化身は、その影を視認する事なく壱番艦を反転——同時に対空統一場粒子クインテシオン機銃群の砲火をバラ撒いた。

 しかしその砲火は、安定性にかける重力子グラビトン単一ソリッド展開——

 鏡の化身は僅かに残る理性の中、蒼き星へ甚大なるダメージを及ぼす完全なる統一場クインティア・フィールドの相転移平行励起使用を避けていた。




 そしてそれは……このカガワの都上空1500mで切って落とされる戦火の火蓋――

 計らずして二大超戦艦が、悲しき定めのまま激突する事となったのだ。

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