5話—3 魔業の魔法少女
守護宗家にとって……そして地球に住まう民にとっての非常事態が舞い込み——素早く
残すは
「
今まではんなり令嬢の献身で救われて来た少女達は、彼女がそばにいる——それだけで襲い来る数多の危機を乗り越えられた……そんな思いを抱いてその乗艦を待つ。
だが——はんなりな慈愛が売りの少女が立ち止まり……高らかに想いの長を言い放つ。
「もう守られるだけは嫌なんおす!」
それは彼女に支えられた少女達も想像しなかった、はんなり令嬢の熱き思いの猛り。
そこに宿る決意はすでに揺るぎない形となって……少女の双眸へと光を宿す。
しかしその真意に絶望的なまでの不安を爆発させた、支える者の一人が叫ぶ様に悲痛を放つ。
「お……お嬢様っ!?何を……何を言っているのですか!?まさか、あの力を解放する気じゃ——」
「違いますえ?
悲痛に歪む
生きる者の……生へ向けた熾烈なる叫び。
「せやけどな……やっとウチに、お父様とお母様の思いが届いたんおす。きっとこうなる事を見据えてウチへと残してくれてた……キッカケとなる思いを——」
「……お……嬢様?それはどう言う——!?——」
悲痛のまま疑念を浮かべたSPに見える様——はんなり令嬢が差し出したのは、剣と時の歯車を形取る小さな首飾り。
SPはそれが何なのか理解に及ばず、疑問符に思考を支配されるが——その解を放ったのは、似通う物をよく知る小さな当主のSP
「ようやく……約束された目覚めが訪れた様ですね、
「その願いの全てはそれに——あの悲劇の英雄から守護宗家に託された、
語られた衝撃はそこにいる少女達——そして何より、はんなり令嬢を守り続けたSPへ……衝撃となって駆け抜けた。
「お嬢様……そんな——」
「
「今こそお嬢様の……巣立ちの時だぞ?」
故にいつまでも少女達を籠に閉じ込めるは、大人の取るべき道では無いとの意を込め同僚となるSPへ告げる。
一時の間——ゆらりと顔を上げたドンくさいSPの表情から……ドンくさいと言われた雰囲気が抜け落ち——
まんまるメガネと称されたそれを取り払った表情は、凛々しき大人のそれ。
メガネの奥に溢れていた熱い雫は、主の巣立ちには相応しくないと拭い去り——続いて輝いたのは、紛う事無き守護宗家SPの面構え。
そして——
「強くなられましたね、
「それでも内なる厄災の力を押さえ込み……決して負に落とさぬ覚悟がおありですか?」
「覚悟はあります。せやけどそれは、一人で背負えるものや無い言うのも理解しとりますえ?ウチの覚悟は……ここにいるみんな——」
「アーエルちゃんにレゾンはん。
見た事も無いドンくさかったSPの表情へ……見せた事も無い凛々しきしたり顔を突き付けたはんなり令嬢。
もはやそこに言葉のやり取りなど不要であった。
深い嘆息……しかし令嬢を見やるSPの表情から憂いが霧散した。
彼女もようやく理解する。
己が仕えし少女は、後方でただ守られるだけの存在では無い——前へと自らの足で踏み出し、戦う事が出来る少女であると。
SPの記憶に眠るは悲劇……だがその悲劇すら背負って歩む者こそが、己の仕えてきた者——三神守護宗家に預けられし、英雄の血を継ぐ少女であったのだ。
「……
送られたのは
SP
過保護のまま主を籠に閉じ込めるよりも、世界に放つべきと悟ったから。
はんなり令嬢もそれを感じ取り……そして手にした愛しき両親の思いを天へと掲げ——
——遂にその力を解き放つ。
「我が内へ巣食いし厄災の因子!
「〈
解き放つは
光にも魔にも属さず、その一帯を包むは宇宙の真理である純物理のエネルギー。
はんなり令嬢の言葉に呼応した
そして掲げたその手を握りしめるはんなり令嬢が——劇的なる変貌を遂げる事となる。
「
「装填……
魔法少女としてその力の発現が叶う四人の少女達。
その眼前へみなの何れとも異なる波動が大気を揺るがせる。
現れたるは左右に分かれる様に配された白と黒……
背に広がるは有機生物を思わせる左の肩翼と、無機的な機械を感じさせる右の肩翼。
さらに右腕を覆う有機質の纏いに、左下肢に纏われる機械式の甲冑。
「
「フッ……テセラに同意だ。しかしこの場合どちらで呼べばいい?
であるがそれは
コアである
永久機関とも称される数字の獣のコアがあって初めて実現する、世界の誰もがそれを我が手にとの妄執に駆られた禁断の技術であった。
「ばーか、何言ってんだし……この吸血鬼は。そんなの好きに呼べばいいんだよ。だってこいつは私達にとっての
「うん……そうだね。私達にとって
眼前に現れたるは化け物である。
そのはずが、
赤き魔王が疑問を投げれば、
そこへ
先の防衛大戦を切り抜けた四人の魔法少女は、皆想いは同じと視線を新たに生まれた魔法少女へと一斉に注いだ。
「そうおすえ。ウチはみんなにとっての
四人の視線に同じく映る獣宿せし少女は――
愛しき友人達の言葉へ力強き想いを返し……そして背に舞う違う姿の双翼を雄々しく広げた。
「ではみなはん、行きまひょ!まずは事の真相確認と、新呉市からの救助要請へ答えるべく――」
「この
四つの魂の支援を受けて――
魔業を背負う少女が飛び立った。
これより彼女を襲う無限の煉獄へ、凛々しき真紅の双眸を叩き付ける様に――
背後へ魔導の最大戦力を
双翼へ……父と母の無限の想いを羽ばたかせて――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます