ギャル、異世界の謎に迫る

 壁や床に書かれているのは、会話文だった。口論をしているようだが。

 

『ちょ、待ってタンマ! この領土取られた!』

『へっへーん。もーらいっ』

『うっぜ! こうなったら、こっちの洞窟クリアしちゃうもんね!』

『あーっ! てんめ、難攻不落のミラクル鍾乳洞を爆破しやがった! 入ったら色んなトラップでいじめてやろうと思っていたのに!』


 どうやら、土地を創造して、そこに冒険者をおびき寄せたり、領土の奪い合いをしたりしている様子のようだ。

 まさに、リアルタイムストラテジー・ゲームをチャットしながら楽しんでいるかのよう。

 

「ハッカ、あれって」

「ええ。日本語ね」

「なんか、楽しそうなのだけど?」

「実際、楽しいんじゃね?」


 天井の文字を見つめながら、遙香はチョ子と意見を交わした。

 

 遙香は、ダイフグを呼び戻す。

「あなたの計らい?」


 尋ねると、ダイフグは「さいですわ」と肯定する。

 天井の文章を読もうとした。だが、首が痛い。


「寝転がってもうても構いまへんよ。床は汚れてませんさかい」


 ダイフグの言葉に甘えて、チョ子と二入で寝そべった。 


「ア・マァイモンの歴史……ね」

「ア・マァイモンとは、この世界の言葉で『隠された富』という意味だ」


 エクレールが、ア・マァイモンの歴史を語り始めた。


 創造主の名を取った星は、創造神アモンドと破壊の魔王ベリーアルが争っている。

 アモンドが世界を想像しては、ベリーアルが壊していった。

 どちらも、触れただけで世界を手軽に変質させてしまう力を持つ。

 自分たちは直接手を下せない。

 

 そこで、世界の住人たちを駒として、ゲームを進めていく。

 だが、戦況は次第に膠着状態へ。


 ならばと、別次元からイレギュラーを召還して、流れを変えることにしたのだ。

 一人は神の選んだ英雄として、もう一人は、ベリーアル直属の配下、魔人として。


「アモンドとベリーアルは、別次元に居を移した。この世界にいては、自分たちの影響力が大きすぎるからな」


 エクレールの話を聞きながら、遙香はある仮設を立てた。


「この星に呼び出されているのは、どうやら私たちだけじゃないみたい」


 メイプリアス地域は、いわゆる箱庭だ。

 メイプリアス地方以外にも、様々な世界があるらしい。

 とはいえ、遙香たちに与えられている役割は、メイプリアスの攻略のみ。


 だが、神と悪魔の争いは、覇権を求めるわけではない。

 この戦いは永遠に続くと確定している。

 飽きが来ないように変化をもたらす。

 それこそが、神アモンドと魔王ベリーアルの使命なのだ。


 と、資料には書かれていた。


「モンスターの目的は、文字どおり【ロールプレイ】だったのね」

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