ギャル、エルフの英雄とチームを組む!

「待って、チョコミントって何?」


「ウチがチョコで、あんたがハッカ。英語だとミントっしょ?」


 そんな理由で。

 まるで二人がセットでないと成り立たないような言い方だが。


「チョコミントねぇ。分かったわ、それでいきましょう」

 実は、チョコミントは好物だった。


「ほらよ。これがお前たちのカードだ」


 数分後、冒険者のカードができあがる。

 見た目や手触りは金属の板のようだ。定期券や、キャッシュカードくらいのサイズである。


「珍しいか? これは、魔法で作られた特別な鉄板だ。これに名前を書いただけで、自分の能力、所持金、アイテムなどが一発で登録される」


 ものすごく便利だ。

 ただし、ゲームのように盗品を容易に売買できないようである。


 カードの裏に、数字が浮かんでいた。所持金だという。


「これ、お金を下ろせるの?」


「この世界は、通貨の価値が統一されていない。おまけに偽金が横行してな。結局、各国の王国が結託して、全部カード払いになったんだ」


 ちなみに、貨幣は『アイテムとしての価値』で換金できるそうだ。


「そうだ、フィン。ワタシのカードも更新を頼む」

 エクレールが、自分のカードをフィンに渡した。


「金属板だと、更新に時間が掛かるんじゃない?」

「とんでもない。魔法で一発だぜ」


 エクレールは、チームに加入したことや、依頼達成の報告を済ませる。


「よし。お前らもカードをもう一度オレに渡してくれ」

 フィンの指示通り、カードの情報を改める。確かに一発だった。


「ねえ、エクレール。先に行っておけば、一発で更新できたわよね?」

「キミたちはギルドを利用するのは初めてだろ? 方法を見せておこうと思ってな」


 なるほど。理に適っている。


 PCの様な機械へ、フィンはカードを次々と突っ込んでいく。

 ペンタブレットを連想させる道具で、何かを書き込んでいる。

「ゴブリンの巣は壊滅っと。これで更新完了だ」


 フィンがペンを置いた直後、カードスロットからカードが吐き出された。


「早くない?」


「カードが常に、お前らを監視しているからな。何をやったかもカードが覚えている。オレは確認作業だけしているんだ」


 更新されたカードを確認する。

 エクレールが新規登録されていた。

 レベル六五。

 

 ちなみに、自分たちのレベルは、二桁にすら達していない。

 どうしてゴブリンの群れなどを壊滅できたのか、もう思い出せなくなっていた。


 金額をチェックする。アップしていた。ゴブリン討伐の報酬なんだろう。


「それにしては、多すぎるわ」

「ワタシの取り分も、登録されているからな」


 金を渡そうと考えたから、エクレールは仲間に入ると言ったのだと思われる。


「そんな。悪いわ。私たちは何も」

「挨拶料だ。今後も世話になるし」


「友達をお金で買うようなマネはやめて」


 強く言いすぎたか。

 しかし、自分たちはそこまでしてもらう義理はない。


「不快に思ったのなら詫びよう。だが、ワタシは金などあっても持て余すのだ。有効に使える人間に渡したまで」

「別に、不愉快だなんて。お金は返すわ。私たちはたしかに未熟だけど、自分で稼ぐわ」

 責めているつもりではないのだと、遙香は微笑む。


「分かった。では、預かっておいてくれ。必要になったら、好きなタイミングで使って欲しい。ワタシは関与しない」


 基本、チームの金は共有の財産として扱われるそうだ。


「お前ら、宿はどうする気だ?」と、フィンが聞いてきた。


 そういえば。


 古くから、「メシより宿」という格言がある。

 メシを優先したせいで、宿にチェックインできずに野宿して死にかけた冒険者がいたとか。


「オススメの宿は?」

「すぐ隣に、家内が経営している宿が建っている。そこで泊まっていけ。割引はしてやらんが」


 そんなつもりはない。


「確認するが、お前ら『チーム チョコミント』のメンバーは、チョ子とハッカでいいんだな」


「待って。私の名前はハッカじゃなくて、遙香なんだけど?」

 カードを確かめるとすると、名前が書き換えられているではないか。


「ちょっとチョ子! あんた私の名前欄、いつの間にハッカって書き直したの!?」


「へっへーん」


 フィンに教えられた宿に着くまで、遙香とチョ子の鬼ごっこは続いた。

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