第8話 あなたに〈美智子〉さん

8 あなたに〈美智子〉さん


象のように 巨大でないから


やさしい象の目をしていないから


ぼくは 象にはかなわないから


あなたの髪で故郷につなぎとめられた


というのは ぼくの詭弁だ


あなたの豊旗雲の黒髪は でも


あなたの華奢で 大きな存在は


あなたの好きな切り子細工のグラスの


空にすかすと 刻々とかわる光の波動


のように


歳月が変転したが


あなたと過ごした時は


黒髪につながれた


象でない 象である


ぼくには


楽しいものでした







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