第6話 鹿沼 詩可沼

鹿沼 詩可沼


ぼくに一掬の詩魂があれば流れ出て詩の河にそそげ


猫は悪魔 なんていやねえ

悪魔は猫 なんて嘘よーね

魔導師の使い魔は 犬か豚

ミュ―とムック アタシとボクは宿主を見守る眼球

燦々と輝く黄金色の四球

二日酔いのご主人さまには

ウィスキー色に映える

四杯のストレートグラス


アタシはミュー 猫のなきごえ ちがうわー

ミュタントのミュー ネコデナイネコだわよ

ミューミューミューミューミューミューミュー

我が輩にはもう名前があるのでR

母ミュ―の胎内よりいでしときより6キロ

あったのでR なんていっちゃって 実は

不肖の息子 だったりして 名は無喰

ムッツリスケベエのアノヒトは

木喰上人の信奉者でありまして

そこで我が輩 名はムックとはっします

水濁って 魚住む詩可沼にて湯あみしゃした

ナンッチヤッテ かっこつけちゃっているが

なにも食わずにおおきくなった

無を喰らい6キロになった ぼくはムック


巨漢の 宿主の のたまうく朝ごとの祝詞

おまえらホンマに飢えたら

おれを 喰らえ 85キロの生肉だぞ

か細き 奥さまは こころの処女膜をふるわせて

いますこし 寝ていたいわ おねがい

ミュ―とムック ムックもう太らないで

ミッキーロークも肥え うちの宿六も肥えふとり

ああ男たちよ わたしの夢を覚まさないで

また すやすやと 寝息をたて 白河夜船


朝だ朝だ 夜明けだ朝だ あさきゆめみて

詩を書こう

詩を書こう

ミチコよ 目覚めよ ミューとムック もうナクな

朝食のうたげに腹いっぱい詩可沼の水と固形食をやるぞ

詩可沼は朝から梅雨寒

詩の書ける日 仕事は休み 日常の死の日


注 わが町の栃窪溜めの近くには木喰上人を祭った木喰堂があります。





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