第二話 俺たちの出逢い

いつもの噴水広場ではなく、今日はギルド本部があるTOKYO集合だった。

このリアル・ワールドではキャラ作成時に必ずギルドに入らなければならない。これは作中の設定であり、実際に誰かとパーティーを組めということではない。あくまでも設定だ。

もし、パーティーを組みたい際には即席パーティーとクランの二種類ある。即席パーティーの場合は文字通り、その場で作り、その場で解散となるが、クランの場合は解散や脱退をしない限りパーティーでいることが出来る。もちろん、クランに参加しながらでもソロプレイは可能である。

そのクランを作成するためには一定量の金貨が必要である上に、このTOKYOまで来ないと作ることが出来ないと少々、手間のかかるものである。

その他に特定のクエスト時のみ解放されるクエストメンバーと呼ばれる、同じクエストを志望する者同士でパーティーを組む制度もある。一見、メリット尽くしに見えるがドロップアイテムがランダムで手に入るため、確実に手に入らなくなってしまうというデメリットがある。

今回は試しにクエストメンバーを組んで〈ベヒーモス〉に挑戦してみようという話になったのだ。

しかし、ここは懐かしいなぁ...


-今から一年前くらいのこと


発売日から一週間ほど遅れて購入した俺は、一秒でも早くプレイしたいと心を躍らせていた。

キャラクターメイキングから始まった。自分自身が戦う姿になるので、一生懸命に試行錯誤を繰り返しながら作成した。その結果、キャラクターメイキングにかなりの時間をとられたため、俺は焦っていった。

特段、制限時間があるだの、イベントがあるといった訳じゃなかったのだが、すぐにでもプレイしたいと思っていた。その結果、職業は無難な剣士を選択し、チュートリアルは長すぎたため、スキップしてしまった。

その結果、始まりの地TOKYOで俺は困り果てていた。

ギルド本部内の丸テーブルでうなだれていると、三人組に声を掛けられた。


「初めまして。君はニュービーかな...?」


ポニーテールの女の人が聞いてきた。


「...ニュービー?」


「ああ、初心者っていう意味だよ」


ガタイの良い男の人が教えてくれた。


「...そ、そう」


「あんまりお前が前に出るなよ。恐がるだろ?」


フードを被った男の人が言う。


「あ、それは悪い」


「まぁまぁ、クエストはもう受けてみたの?」


「...いや、まだ。その、どうやって受けたらいいか分からなくて...」


笑ってごまかす。


「あーあ。チュートリアル飛ばした人でしょ?」


「...はい」


「たまにいるんだよね。チュートリアル長いからって飛ばす人。でも、ちゃんと読んだ方がいいよ」


「...そうします」


「あ、そうだ。私たち、これからスライムの討伐に行くんだ。良かったら、一緒に行かない?」


「え、でも...」


後ろの二人の顔を見る。


「いいよ」


「スライムならニュービーでも倒せる」


「なら、お願いします」


そんなことで俺は三人は即席パーティーを組んで、一緒にスライム討伐へ向かった。

道中で簡単な自己紹介が行われた。

ポニーテールの子がKANON〈カノン〉。ガタイの良い人がYUUDAI〈ユウダイ〉。フードを被った人がAZUMA〈アズマ〉。

目的地に着くと青い色のしたスライムが数匹いた。

そこで戦闘の基礎やコツを教えてもらった。実際に自分で剣を振るのは難しく、相当な練習量が必要だと感じた。また、武器種スキルと職業スキル、魔法についても教えてもらうことが出来た。

ダメージを受けても何も痛くなかった。当たり前か、これはゲームだもんな。


【武器種スキル】

リアル・ワールドでは、片手剣、大剣、刀、斧、槍、鞭、杖、弓、盾、の9種類の武器が存在する。

各武器種には固有のスキルが備わっていて、武器によって所持しているスキルが異なる。また、スキルを保有するのはレベル5(6段階の)以上の武器で滅多に手に入ることがないそうだ。


【職業スキル】

職業スキルとは、各職業が取得することができるスキルのことである。取得するには熟練度が必要である。さらに使用できるのは基本四つまでで、職業によっては最大8つまで使用できるそうだ。全て埋まっている状態で違うスキルを取得したい場合は一つ捨てなければならない。また、その際に熟練度はリセットされてしまう。だから、よく考えて取得しなければならない。


【魔法】

武器種スキルおよび、職業スキルで取得できるもの。詠唱、つまり使用するまでに時間を要するが、その効果は絶大なものである。使用する際には術者のマジックポイントを消費する。中にはある特定の条件を満たすことで発動できるものもあるそうだ。俺とは縁のないものだろうな...


無事にスライムを討伐した俺と三人はギルド本部へ戻って一休憩していた。


「はい、お疲れ様」


カノンが飲み物をくれた。

ありがとう、とお礼をして受け取り、一口飲んでみた。

次の瞬間、吐き出してしまった。


「まっず!!」


「でしょ、でしょ!」


カノンは少し嬉しそうだ。


「これは一体...?」


「ドロガエルの油汁」


聞いただけで吐き気を催したため、それ以上は聞かないことにした。

本当に不味かった。これほど不味い飲み物を飲んだのは初めてだ。

それにしても凄いな。視覚、聴覚、触覚。それに味覚まであるとは...

一人で感心していると二人が戻ってきていた。カノンが二人の顔を見るとお互いに頷き合った。


「ユウマくん、私たちのギルドに入らない?」


「えっ?...俺が?...でも、どうして?」


「私たちのパーティーにストライカーがいないから...」


途中で黙り込み、少し恥ずかしそうにしている。


「...ううん、違う。ユウマくんと気が合うからかなっ!」


カノンは笑顔で言った。

俺に断る理由がなかった。


「...こちらこそ、よろしく」


四人で握手を交わした。


【職業について】

職業は、ストライカー、ディフェンス、サポート、テクニックと大きく四つに分けられる。

なお、エクストラクラスも存在するが、まだ見つかっていない。

ストライカーは攻撃に特化した職業。

ディフェンスは守りに特化した職業。

サポートは味方の援護に特化した職業。

テクニックは様々なオプションとして動けるように特化した職業となっている。


【ストライカー】

攻防のバランスのとれた剣士、守りを捨てたバトルマスター、魔法と剣を使いこなす魔法剣士の三つである。


【ディフェンス】

攻防のバランスのとれたタンク、防御に特化したパラディンの二つである。


【サポート】

回復・補助のバランスのとれたヒーラー、回復に特化したシスター、補助に特化したサポーターの三つである。


【テクニック】

攻撃・攻防の支援のバランスのとれたアーチャー、攻撃魔法・攻撃補助に特化したアベンジャー、攻撃魔法・防御魔法に特化した賢者の三つである。


-以上が一年ほど前の出来事だ。


...確か、あのあとストライカーとか分からなくて教えてもらった気がするなぁ。

それも今じゃ懐かしい思い出だ。

俺は丸テーブルに置かれていた飲み物を口にする。

次の瞬間、吐き出してしまった。


「まっず!!」


「それ、ドロガエルの油汁よ」


振り返ると夏音、雄大、東、以外に見慣れない四人がいた。


「紹介するわ。彼らが、今回のクエストメンバーを組むことになったパーティーよっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る