第5話 消えた村

 ウッドロッドはあるはずの場所にはなく、廃墟とかした村は映画かなにかのセットの後のようだった。

 新興宗教団体が信者をだますために利用したとFBI は予想したが、エスメラルダは配置も規模もまるで違う別の場所だと言う。

 突如、ある廃屋が炎をあげた。

 皆のいしきが集中し、爆音に気をとられている間にエスメラルダは連れ去られた。

 カーリンが車中でくちにする、忌まわしい記憶とこれからの邪悪に背筋をなぞられるような気分になるエスメラルダ。

 手錠をかけられ身動きができない。

 交差点のきらめきが禍々しくサイケデリックにかがやく。

 エスメラルダは肩からカーリンのいる運転席に体当たりし、車は急ブレーキを踏んだ。

 一瞬のできごとだったがすべてを詳細に捉えている。

 エアバッグが急速に膨らみつつあるハンドル部にカーリンの頭を押し付けた。エスメラルダは背中からフロントガラスを突き破りそとへとなげだされ、前の車のフロントガラスに叩きつけられる。

 身体中に痛みがはしる。

 全ての動きが見えおり、あるていど身体の自由も聞いた。

 それを見ていた人間がいるならその反応におどろいたことだろうが、エスメラルダは自覚していない。

 頭部をかばって致命傷は避けたが。

 周囲に人が集まってくる。

 カーリンは腕を垂らしたまま動かない。

 

 ガソリンの臭いが充満する。

 エスメラルダは痛む身体をひきずり闇の中へと駆け込む。

 光の当たらない場所へ。悪魔の目の届かないばしょへ。

 エスメラルダは何をか叫んだが、何を口走ったか覚えてはいなかった。

 人々が散ってゆく。

 その後轟音がー辺りを揺らし、エスメラルダは猛然と渦を巻く炎をながめていた。


 村へ帰る手がかりは潰えた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この街に以前の私を知るものは限られる。

 私はエメル ド エトランゼだ。

 私をエスメラルダと呼ぶ者が現れた時、その時が私の、、、



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る