アンガージュマン

私はペンを折った

正確には、キーボードを叩くのをやめた



毎日触れる情報に疲れ

怒ったり悲しんだり、落ち込んでみたり

発散する矛先が 吐露する場があったはずなのに

「芸術」という 顕在化する術が

自分はそれが「己」であると思っていたのに


だが、日頃の怒りや悲しみで脳が疲れ、鈍化した

いや、一種の逃げかもしれない

私は嫌なものを 怒りの種を叩くことにした


政府が悪い 上層部が悪い

人が悪い 境遇が悪い

もしかしたら「運命」が

人間という種、そのものですら!


満たされない思いが膨らむたびに

吐き出す場所を探して彷徨った

悲しかった

結局私には何もないのだ

叩いたところで何も得られない

私は何も得ていない

手のひらのうちに、何があるだろう

何があっただろうか


すべては吐き出せない

結局どれも稚拙だから

それでも私はペンを執った

今日もこの部屋でキーボードを叩く音がする

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